0008 you ページ8
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私、何かしたのかな。
どうしたらいい?仲違いする理由も分からないし、なす術もない。
「…ちゃん、Aちゃん。」
「あ、ごめんなさい!」
「クレープ、溶けちゃうよ。」
瑠姫先輩とベンチに座りながら、手に持ったクレープが溶けかけているのに気付いて慌てて口を付ける。どれくらい考えていたのか、瑠姫先輩のクレープはもう半分ほど減っていた。
「Aちゃんってさ、」
「好きな人とか、居るの?」
突然の言葉に、クレープを食べる手が再び止まる。瑠姫先輩の方を見ると、彼は少しだけ微笑みながら私の顔をじっと見つめた。
「え…っと、」
今まで、純喜への想いを誰かに伝えたことはない。はるかや景瑚にも言っていないこの気持ちを、瑠姫先輩に伝えてもいいのだろうか。
「俺、何も思ってない子に一緒に帰ろうなんて声かけたりしないよ。」
その言葉の意味は、咀嚼せずとも充分に分かった。
「でも、別に付き合って欲しいなんて言わない。」
今はね、と付け足した瑠姫先輩は、笑顔を崩さないまま残りのクレープを頬張った。
「ただ、俺も男で、クレープ食べるAちゃんに見惚れちゃうくらいに好きってことは覚えといて」
立ち上がった瑠姫先輩は、スマホを取り出して私に向ける。
「色々と順番間違えてるけど…とりあえず、連絡先だけ、教えて欲しい。それで、もしよかったら、またデートしてよ。」
私は、純喜が好き。
幼馴染みで、彼女になれる確率は少なくて、瑠姫先輩みたいに勇気もないからデートに誘うことだって一度も出来ないでいる。
誰かを想うことの辛さをよく知っている分、瑠姫先輩の言葉は切なくて。それでも、想われることは幸せだと感じてしまった。
ごめんなさい。
誰に、何を謝ったのか。自分でも分からない。けど、きっと。この誘いを断れない自分と、逃げ場のように利用するのと同じなのに甘えてしまった瑠姫先輩へのやさしさに対してだろう。
「ありがと、今日LINEしてもいい?」
「はい。いつでも、色々お話ししましょう。」
この人を好きになれたら、幸せなのかな。
いつまでも純喜と幼馴染みでいたら、別れもこないんだもんね。
to be continued...
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作者名:マツ子 | 作成日時:2022年10月1日 1時