0007 you ページ7
.
"ごめん、今日はちょっと先に行くね!"
はるかからのLINEを見て、いつもの時間に家を出る。そこにははるかも、純喜も、景瑚も居ない。しばらく待ってみたけど誰も来る様子がなくて、不思議に思いながらも遅刻しないようにと1人で道を歩く。
何かあったのかな。純喜は部活として、景瑚は…寝坊?
気になった私は、景瑚に電話をかける。
「もしもし」
「景瑚?まだ家?起きてる?」
「ごめん、学校。先に来ちゃった。」
「よかった、寝坊してるんじゃないかと思って。」
「大丈夫、ありがとう。またあとでね。」
何か、いつもと違うような。
元気で陽気で騒いでいる景瑚の様子は電話越しでは一切感じられなくて、余計に不安になった私は道を急いだ。
「おはよ!」
教室に入ってすぐ2人の姿を見つけた私は、いつものように言葉をかける。
「おはよ、A」
振り向いた景瑚は、ニコッと笑って私に手を振った。
「はるかー、今日は一緒に帰れるからね。」
そう言って彼女の肩に触れると、ビクッと揺れたはるかは控えめに笑って振り返る。
「ごめん…今日ちょっと、用事あって。」
「用事?」
「うん。ごめんね。」
すぐに逸らされた目に、こんな私でも流石におかしいと気付いた。その違和感の答えを求めるように景瑚を見ると、いつもならおちゃらける彼ですら私から目を逸らす。
そして一日。私たち3人は、まともに話すこともなかった。
終業後、早々に居なくなったはるかの姿に少し寂しさを覚えながら、残っていた景瑚に声をかけようと荷物を持つ。
「Aちゃん!」
「…瑠姫先輩?」
廊下に見えた姿に、会釈をして近付く。
「今日空いてる?」
「え…あ、っと…」
ちらっと視線を向けた景瑚は、また私から視線を逸らす。
「ちょっとだけでいいんだけど、帰り道付き合ってくれないかな?」
このまま景瑚と帰っても、何を話したらいいのかも分からない。この気まずい空気を耐える自信も、ない。
「分かりました。大丈夫ですよ。」
そう返事をすると、後ろで席を立って荷物を纏める音がする。すぐに教室から出て行った景瑚の姿を見ないようにして、私も教室を出る。
「…けんか?」
「え?」
「いや、なんか…変な感じして。」
普段から一緒に居るわけじゃない瑠姫先輩に気付かれるほど、私たちの間にある空気はおかしかった。
.
264人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:マツ子 | 作成日時:2022年10月1日 1時