0022 ruki ページ22
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「また明日な〜。」
学校終わり、純喜に手を振って校舎を出る。最近はAちゃんと景瑚、3人で会うことが多かった。今日こそはAちゃんと2人でと思って教室に寄ってみたけど、彼女の姿はない。
「景瑚、Aちゃんは?部活?」
「うん。部活。」
いつもなら「残念だったね瑠姫くん!」なんて揶揄ってくる景瑚の答えにしてはあまりにも静かで、それが不思議だった俺は教室に入って景瑚の前の席に座る。
「どうした〜景瑚。」
「瑠姫くん、俺やらかした。Aに避けられてる。」
ボンっと机に顔を突っ伏した景瑚は、弱々しい声でそう呟いた。彼の話によれば、数日前、ふとした瞬間にAちゃんへの好意を口にしてしまったらしい。しかもそのあと、Aちゃんは走って帰ってしまって…今日まで、あからさまに避けられていると。
「お前、人には待ったかけといて何だよそれ…」
「言うつもりなかったのに、気付いたら口から出てたんだもん。」
「だもん、じゃないだろ。」
Aちゃんにとって、今は紛れもなく景瑚や俺が心の拠り所になっている。実際、最近のAちゃんは明らかに以前より笑顔が増えて、純喜の話をしても至って普通に戻っていた。
それなのにこいつは、また余計なことを。
「とりあえず、俺がAちゃんに話聞くから。」
「いいの…?瑠姫くんだってAの事好きなのに。」
「俺はもうAちゃんのこと諦めてるから。」
と言うか俺は、諦めざるを得なかった。
「遊びだったの瑠姫くん!」
「は?違うわ!とにかく、お前はそうやってウジウジしとけ〜」
嫌味のように言った俺は、笑いながら景瑚を置いて教室を出た。そしてすぐにAちゃんに電話をかける。
「Aちゃん、ちょっと会える?」
「あ、今学校出たところなんで、校門で待ってますね。」
急いで学校を出て、校門の前に立っているAちゃんを呼びながら手を振る。ニコッと笑って頭を下げた彼女は、やっぱり可愛くて、思わず見惚れてしまう。
「お待たせ。」
「全然待ってないですよ。」
「何か食べにいく?」
「またクレープですか?瑠姫先輩、甘党ですもんね。」
少しずつ俺を知っていくAちゃんに、ときめかない訳がない。けど俺は、ここで彼女を手に入れようとは思わない。
今までよりも、うんと可愛い顔で笑う君。
新しい恋をしているのことに、気づかないはず、ない。
to be continued ...
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作者名:マツ子 | 作成日時:2022年10月1日 1時