事務の小松田さんの段 ページ32
僕は少年の腕を掴んで強制的に方向転換した。
「わざわざすみません。お手数お掛けします。」
少年は笑顔で謝る。
なんと言うか、マイペースだし、何処か他人事のように構えている気がする。
「君、学年は？」
僕がそう尋ねると、急に立ち止まり、あぁと足を揃えて真っ直ぐに僕を見る。
「3年ろ組、次屋三之助です。以後お見知りおきを。」
うん、お見知り置きしたいけど、君がそんなに頭を下げたら顔見えないし、そもそも暗くてよく見えないよ。
暗いのに慣れてはいるけど、今は月も雲に隠れて真っ暗だから。
すると、三之助が顔を上げた途端に、雲が切れて月が出た。
「うん、多分覚えた。」
僕が頷くと三之助が心做しか目を見開いた。
三之助は小さくあっと声を上げると僕の後ろを指さした。
「三年長屋だ。ありがとうございました。」
三之助は今度こそちゃんと長屋の方へ走って行った。
良い散歩になったと思いながら小屋に戻り、僕は眠りについた。
朝になり、僕は身支度をして食堂へ行く。
食堂の仕事が一段落したら、今日こそいよいよ事務の仕事が始まる。
とりあえず小松田さんの後を追って見様見真似でやってみる。
なんとか出来そうだ。
しかし、小松田さんと一緒に仕事をしていて分かったのは、小松田さんは少しおっちょこちょいというか、ドジっ子属性というか、その、直球に言うとポンコツ事務員だという事だ。
お茶を注いでは人に掛け、書類を運んではぶちまけて…。
よく仕事続けさせてもらえるなと。
まあ、憎めない人柄だから、きっと人から好かれては居るんだろうな。
僕は今日が仕事初日だったわけだけど、小松田さんと一緒に仕事していて、ずっと次は何かと身構えてドキドキハラハラしていた。
昼には食堂の仕事に入った訳だけど、食堂の仕事の後もまた事務仕事。
夕飯を終えてもまだ本日最後の事務仕事があった。
ようやく今日が終わる…。
なんだかすごく大変だった。
僕はクタクタになりながら事務仕事を処理していく。
「あとはこれを学園長先生にお渡しするだけだよ。」
小松田さんが書類を持って立ち上がる。
「僕がお持ちしますよ。」
ぶちまけられたくないので僕は必死に、だがさり気なく小松田さんの手から書類を引き剥がそうとした。
「大丈夫！」
「いえ、是非持たせてください！」
「これは僕の仕事だから。」
何としてでも奪還したかったが、小松田さんが意外と粘ったので、仕方無くまた後をついて行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
駿河 - はるき (2023年2月21日 10時) (
レス) @page2 id: d099db8a14 (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんのご友人のご友人 - 更新待機 面白かったです三c⌒っ.ω.)っ ｼｭｰｯ (2023年2月3日 23時) (レス) @page34 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
スイちゃんですよ〜☆ - 小松田 女主てぇてぇ眺めておきたい、更新できたら、お願いします！(^^ω) (2023年1月24日 12時) (レス) @page34 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
莉ぃ兎 - はい！三次元のリア充は爆発させたくなりますwww私は腐ってますww多分。←ゆりなです。 (2019年4月29日 17時) (レス) id: 8f6b5d85cc (このIDを非表示/違反報告)
冷奴(プロフ) - ゆりなさん» 私は男女のリア充は爆発させたくなりますねwかと言って腐ってるわけでも無いのですが。多分w (2019年4月28日 11時) (レス) id: 97749a7a82 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷奴 | 作成日時：2019年1月12日 17時
