ヨコハマの歩きかた

虎と探偵社9 ページ10

太宰は虎に向き直った。その顔に恐怖はない。虎が太宰に飛びかかる。

「獣に喰い殺される最期と言うのもなかなか悪くは無いが…君では私を殺せない。」
太宰が手を伸ばす。その指先が、虎の額に触れた。


「私の能力はあらゆる他の能力を触れただけで無効化する」

虎が光に包まれる。人間に戻った敦が太宰の方へ倒れ込む。
太宰はそれを一瞥すると、敦を避けた。
「男と抱き合う趣味はない。」

「うわぁ…最低。流石に受け止めるくらいはしようよ」
太宰を冷たい顔で見つめるAは壊れた木箱を重ねた上に座っていた。

「おい太宰！」
入口から大きな声がした。国木田が立っている。
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
国木田が目を見開く。
「…その小僧。じゃあそいつが？」

「うん、虎の能力者だ。変身してる間の記憶がなかったんだね」
「全く…次から事前に説明しろ」
国木田が頭をかく。
その手には“十五番街の西倉庫に虎が出る 逃げられぬよう周囲を固めろ”と書かれていた。

「お陰で非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」
背を向ける国木田の後ろから、数人の人影が歩いてきた。

「なンだ、怪我人はなしかい？つまんないねェ」
蝶の髪飾りをつける黒髪の女性。与謝野晶子ー能力名『君死給勿』

「はっはっは！中々できるようになったじゃないか、太宰！まあ僕には及ばないけどね！」
糸目で小柄な黒髪の青年。江戸川乱歩ー能力名『超推理』

「でもそのヒトどうするんです？自覚はなかったわけでしょ？」
オーバーオールを身につける金髪の少年。宮沢賢治ー能力名『雨ニモマケズ』

「どうする太宰？一応区の災害指定猛獣だぞ」
眼鏡をかけ手帳を持つ金髪の青年。国木田独歩ー能力名『独歩吟客』

「うふふ。実はもう決めてある。」
砂色のコートを身に付けた蓬髪の青年。太宰治ー能力名『人間失格』

「うちの社員にする」

全員がぽかんとした。
「「はあぁぁぁ！？」」





これが事の始まり。怪奇ひしめくこの街の変人ぞろいの探偵社でこれより始まる怪奇譚。
これが先触れ前兆し。



『へえ、面白い。』
島崎Aー能力名『破戒』
　

中島敦ー能力名『月下獣』












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時間が空いた時に更新できるように頑張るので、気長に待ってくれるとありがたいです。

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