ヨコハマの歩きかた (ページ3)

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虎と探偵社2 ページ3

『げほっ、けほっ…』
何とか引き上げられた。空腹で痩せぎすの少年にはちょっと重すぎた。息を整える。
流れていたのは細身で長身の青年であった。

ぱちっ。がばっ。

青年が目を開いたと思ったら、勢いよく起き上がった。

『うぉっ！』びっくりした。
『あ、あんた、川に流されてて…大丈夫？』

「…助かったか……ちぇっ」きょろきょろと辺りを見回した青年は、呟く。

－「ちぇっ」つったかこの人！？ドン引きである。
「君かい？私の入水を邪魔したのは」 …は？

『邪魔なんて、僕はただ助けようと！…入水？」
「知らんかね、入水。つまり自殺だよ。」

『は？』
「…はぁ。私は自殺しようとしていたのだ。それを君が余計なことを…やれやれ」『は…はぁ』

この青年は何を言っているのか。

ーあれ？僕今怒られてる？
変な人に会ってしまった。

「まぁ…人に迷惑をかけない清くクリーンな自殺が私の信条だ。だのに君に迷惑をかけた。
これはこちらの落ち度、何かお詫びを『ぐうぅぅぅ』…空腹かい少年？」
『じ、実はここ数日何も食べてなくて…』

　ぐぅぅぅぅ
「…私もだ。ちなみに財布も流された」
『えぇ？助けたお礼にご馳走って言う流れだと思ったのに…』

「？」きょとんとした顔である。
『「？」じゃねえ！』

「おォーい、こんな処に居ったか、唐変木！！」
長い髪を後ろで縛ったスーツの男性が、川の向こう岸で怒鳴っている。

「おぉー国木田君、ご苦労様」
　 …知り合いなのだろうか？
「苦労は全てお前の所為だ、この自殺マニア！！お前はどれだけ俺の計画を乱せば…」

「そうだ君。良いことを思いついた。彼は私の同僚なのだ。彼に奢ってもらおう」
『へ？』
「君、名前は？」
青年は、聞けよ！！と言う国木田の声を完全に無視している。
『中島…敦ですけど』
無視してていいのかな…

「ついて来たまえ、敦君。何が食べたい？」
『はぁ…あの…茶漬けが食べたいです』

ぷっ。青年が吹き出した。
「はっはっは！餓死寸前の少年が茶漬けを所望か！良いよ。国木田君に三十杯くらい奢らせよう！」

「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰！！」国木田はさらに怒っている。そりゃあそうだ。
『…太宰？』

風に砂色のコートが靡く。

「ああ、私の名だよ。太宰、太宰治だ。」

まだ夢主ちゃん出てきてなくて、すみません…