△△△ ページ18
「……どういう事？ 」
「実は昨日、僕……たまたま、Aさんのアパートの近くを通りかかって」
「白々しー。露骨にAの様子見に来てたじゃんか輝君」
「はいこれ狩屋君どうぞ」
「ムガ」
輝がお菓子を狩屋の口へ乱暴に突っ込む。入院患者に勝手に食べ物ってやっていいんだっけ……。
「そしたら狩屋君はやっぱり堕天してるし消えそうだし、Aさんはストレスで倒れちゃうしで。取り敢えず二人抱えて部屋に戻って……」
「て？ 」
「勝手に僕が狩屋君と契約しちゃった。人間にしてくださいって」
「……」
「……そんなのアリなの？ 」
狩屋へと視線を移せば彼も眉を顰める。
「さぁ……。
「輝、半分しか人間じゃないのに？ 大体アンタが人間になってるのはなんなの」
「いや、俺も悪魔の契約については知らない。そもそも契約した事自体憶えてないけど。気絶してたし」
「アンタダメでしょそんなんじゃ……！ 自分の仕事くらい頭に入れなさいよ！ 」
「仕方ないだろ！ 悪魔成りたてほやほやだったんだから！ 」
「よくそんな開き治れるね！？ 」
「二人とも声、声！ 」
輝がストップをかける。
「もしかしたら書き方間違えて、狩屋君もサービスで人間になっちゃったのかな」
「そんな通信販売で一個買ったらもう一つオマケでついてくるみたいな、ありえないでしょ」
「あはははっ！ そうだよね。……でももう確かめようがないんだ」
答え合わせは、死ぬまでお預けだ。
……そうだ、人間ならば当然人間の世界で生きていかなければならない。
「退院したらどうする？ 」
「……考えてなかった」
「……」
「まぁ、まだ時間あるし……。辻褄合わせで俺と、あと輝君の『これまでの人生』くらい、用意されるだろ。それ確認してからだな」
「あのさ、……二人が良ければでいいけど」
一緒に暮らそうよ──今の家が狭いのなら、いい所見つけとくから。
なかなか返事が来ないので提案した事を後悔しはじめたその時、輝が背伸びをした。
「じゃあ、片付けしなきゃですね！ 」
荷物持ちなら任せて。その言葉に涙腺が緩む。
「お金も貯めとかなきゃじゃない？ 」
「確かに」
狩屋の指摘に輝が苦笑いを浮かべた。
引越し費用なら繁忙期じゃないしそんなにかからないでしょ──そう口にして、気づく。
「まさか、今回の狩屋の治療費」
「Aさんのお財布から、出しました」
「この、……もう！ 」
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作者名：しけ | 作成日時：2023年12月5日 0時
