第七十五話 ページ25
Aside
「私は的場一門には入りません。」
キッパリとそう言ったにも関わらずまた変な勘違いをされる
的「あぁ、どこかの払い屋にでも雇われているのですか?それであれば、そこより良い条件を出そう」
「いや、そう言う問題でもなくて」
的「それは困りましたね」
口ではそう言いながらも全く困ったような様子はなく、あの笑顔が張り付いたままだ。
的「話はそれますが、一つ聞いてもよろしいでしょうか」
「は、はい…」
しばらく黙り込んだ末、スッと笑みを消し、真剣な目付きへと変わった的場。その瞳は鋭く。見透かされているように思えて、思わず唾をごくりと飲む。
的「貴女は、“誰”ですか?」
「ぇ」
(んん?…………)
的場さんのいっていることが、意味が読めない。その言葉に固まってしまう。
これは、新手の冗談?
“え”と小さく言葉を漏らすと、次の時には普段と変わらぬ表情へと戻っていた。
(何だったんだ……?)
的「…いえ、何でもありません。今のは聞かなかったことにしていただいて_」
「_いやいや、気になります」
冗談じゃなかったなら、本気?どういうことだ?さっきこの人は自分で東名Aと呼んできたのに…
ここまできて聞かなかったことは、さすがに無理だ。
だが次の瞬間、的場さんは、私に、大きな衝撃を与える一言を口にした
的「結論から言わせていただきますと、東明Aなんていう人間は存在しないんですよ」
「・・・は?」
今。
私は自身の存在を否定されている
唐突に告げられたその事実に、混乱。というより、脳みそが停止する。
固まる私を尻目に的場さんは話を続ける
的「貴女の情報をいくつか手に入れたんだが、どれも出鱈目ばかり。
以前住んでいた学校や地域。その他。
だから血縁者の特定もできない。
もしかして本当に妖か何かかと」
「………」
必死に停止している頭を回転させる。
確かに、学校に登録しえある情報はほとんどが嘘だ。だってそれは仕方のないことだ。山で暮らしていただとか、捨てられたとか、親の名前すら知らないのだから。
でも、調べるっていったら、的場さんなら色んな手を使って、情報を調べられそうだし、東明っていう名字から親を探ることができるのでは?なのに特定できないって、どういうこと?
的場さんの情報収集不足……?
全く持って追い付けない。
(え、でも自分、東明、A………だよ、ね?)
自分に問いかけてみても、100%そうだとは言い切れない自分がいる___
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作者名:穴 | 作成日時:2020年8月25日 19時