第七十二話 ページ22
夏目side
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「あ〜ぁ……疲れた……」
隣で一緒に散歩がてら、河原を歩くA。夕日が映えて、とても綺麗だ
夏「だな…」
あのあと、中級達に連れられた先には、ヒノエやちょび達が待っていた。あの河童や隣町の子狐も。
皆ただ酒と言うことを聞いて来てくれたそうだ。
皆が集まってからは影踏み鬼ごっこをやった。今までは見ているだけでやったことがなかったから、とても楽しかった。でもヒノエはAがお気に入りだからってAの影ばっかり踏んでたな…
「ホント楽しかったなぁ…田沼や北本達とも遊びたいよ」
夏「そうだな……きっと、楽しいだろうな」
五人で遊ぶ場面を想像してか、Aの口もとが綻ぶ。
夏「名取さんのところではどうなんだ?」
「ん。楽しくやってるよ」
夏「夏休みの間、何やってたんだ?」
「私はね、依島さんていう人のところで住み込みで勉強してたよ」
依島……?誰だろう
夏「な、何の勉強?」
「それは、秘密かな…夏目は?」
夏「おれも同じ感じだよ」
「そう……」
二人の間に、沈黙が流れる。
聞くなら、今しかないかもしれない。ようやく、二人だけになったのだから。
“あの時、どうして出ていったのか”。本当の理由を
夏「Aは……」
「?」
夏「どうして、あの家を、出ていったんだ?」
そう聞いて、おれは歩く足を止めた。試験な話だから。Aと、向き合いたいから。
Aはしばらく先を歩いたあと、こちらを振り向いた。その顔は、夕日のせいで、影になっていて、表情が読み取れない
「…どうした?早くいかないの?」
夏「答えが、聞きたいんだ……」
「強く。なりたいから」
夏「……」
顔は見えないけど、声のトーンは真剣そのもので、嘘は言っていないのだと分かる
「大切なモノを守るには、力がいるんだよ。だから、守りたいなら、強くないと、いけないんだよ」
“守りたいモノ”
Aは、ゆっくりと、自信に言い聞かせるように、そう言った
夏「……Aには、それがあるのか?…」
「うん。まぁ私が勝手におもってるだけだけどね」
ちいさく笑うA。
彼女には、守りたいモノがあるという。けど、彼女を守ってくれるものは、何もない。おれのように、誰しもにニャンコ先生がいるとは限らない。
名取さんはあくまで保護者で、Aが辛い目に遭ったとき、必ずしも助けてくれるとは限らない。
赫良の居ない今。誰が、守るんだろう。Aはその守りたいモノのために、身を、自分を削るかもしれない。そんな時
おれが___守って、やれたな……
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作者名:穴 | 作成日時:2020年8月25日 19時