第三十九話 ページ8
的場side
「……………」
七瀬が部屋を出たあと、仕事に区切りをつけ、一度手を止める
今でも、昨日のアレが、鮮明によみがえる
“綺麗”
あの女の澄んだ、透き通ったキレイな声が、何度も再生される。
初めて。言われた、その言葉。
一度も言われたことなどない
それをまさか、妖に言われるとは、思いもしなかった。
ほとんどの妖は、的場を忌み嫌う。だが、あれだけは違った。そう思っていた。
私の放った式を強く言葉で制し、ひらりと身をかわし、止めを刺すその様は………
その様に、目を奪われた
強く、美しい姿に、欲しい。と思った
逃げないからと式になることを提案してはみたが、約束を破り続け、信用のない的場と、契約を自ら結ぼうとする妖など、いないと思っていた。
なのにあれは、
“なるよ”
強く、静かにそう言った。
的「奇跡だと思っていたんですがねぇ……」
いつか言った、自分の言葉。その言葉の通り、大事にしようと。
だがあれも所詮
的場と敵対している祓い屋の者だろう。まさか、人間に妖のフリをしておくりこんでくるとは。意表を突くものだった
もう、あんなものに、心は揺らさない___
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Aside
ふわふわ。ふわふわ。 風が気持ちいい
まるで空を飛んでるみたい。 隣には赫良
一緒に並んでる。
赫良となら、どこへでもいきたいな。
赫良は嫌がるかもしれないけど。
上には、赫良が待ってるし。
下では、夏目が待っている。
「ぁ」
堕ちる________
「っ……」
空から堕ちそうになったところで、目が覚める。その反動で思わず起き上がってしまう。全身鳥肌が立っている
(なんで今さら、赫良の夢なんて…)
起き上がったのとほぼ同時に、タイミング善く扉が開き、夏目が入ってくる。
心配そうな顔、でも眉間にシワがよっていて……怒ってる
夏「起きたんだな……良かった……」
心底ホッとしたというように、肩をおろす夏目。次に深呼吸をし、息を吸い込むと
夏「馬鹿っ!どこ行ってたんだ!A。探したんだぞ!」
やっぱり怒っているらしく、叱ってくれる
「ごめん……でも、どうやって?」
夏「あのあと、Aがいないことに気づいて、色々森の中を探し回ってたんだ。そうしたら、あの場所に、面の欠片が落ちてて」
そう言うと、包みのようなものから、面の欠片を取り出した。確かに。この面は私のものだ。でもどうやってあの場所がわかったんだろうか…
51人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
穴(プロフ) - ゆきさん» 初めまして!コメント、ありがとーございますっ。面白いっていっていただけて嬉しいです。更新がんばります! (2020年8月17日 20時) (レス) id: 53fc0a995b (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - はじめまして!最近読み始めたんですけど、とてもおもしろくて一気に読んでしまいました!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年8月17日 18時) (レス) id: 479321255e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:穴 | 作成日時:2020年8月16日 13時