小さな恋敵 �� ページ44
：
「A、新しいやつが欲しい。」
『え、もう？』
珍しく燥ぎ気味で恵が持ってきたのは
先週買ったばかりの本
漢字は少ないがそれなりに字数が多く分厚い冒険譚
こんなに早く読み終えるなら続編も一緒に買っておけば良かった
「買いに行こ。」
『うん。いい―…、』
「だめ。」
既に鞄を背負って準備万端な恵を可愛らしく思いながら
二つ返事で了承しようとしたところに
ソファで横になって昼寝していた悟の声が割り込む
昼食後に私の肩に寄り掛かって暫く睡魔と戦っていたが
手を握り腕をさすると呆気なく膝に頭を乗せて眠りについた
そのまま頭を撫でてやるとどんどん重みは増していき
無防備に寝息を立てる姿を眺めて少しの優越感に浸っていた
この安心しきった寝顔を見られる人がこの世に何人いるだろう
寝顔も、拗ねた顔も、甘えた顔も、
私だけが知っている表情が増えるたびに
烏滸がましく、彼は自分の男なのだと思い上がってしまう
「あんたに聞いてない。」
「だめ。Aさんは僕と一緒にイチャイチャするの。」
「一人で寝てればいいだろ。」
「恵はいつも一緒に居るんだから、今日くらい僕に譲れよ。」
恵と喧嘩の途中でも遠慮なく
体を起こして顔を近づけてくるので
手で口を押さえると不満そうに目で訴えられた
挨拶でもするように、何度もキスをしたがる悟
多い時は、目が合っただけでも
私を捕まえようと手が伸びてくる
出来るだけ応えてはあげたいけれど
恵や津美紀の前ではできない
「…。」
『恵？行くのやめるの？』
「…今日はいい。」
『…？』
本は諦めて鞄を置いて帰ってくる恵
どうするのかと観察していると
悟と私の間に強引に座って入り込んできた
満足げに息をついて
反対に不満そうな悟の顔を見上げている
「どういうつもり？」
「べつに。いつもこうしてる。」
「…禪院家に売り飛ばしとくんだった。」
「A。やっぱり俺、こいつ嫌い。」
『んー、悪い人じゃないんだけどね…。』
「この人より強くなるから、俺が大人になるまで待ってて。」
『え…』
「残念。君が大人になる前に、僕がお嫁に貰っちゃうから。生まれてくるのがちょっと遅かったね。」
「どうせすぐ他の女のとこ行くんだろ。」
「君のお父さんと一緒にしないでくれる？」
「痛っ。頭掴むなよ！」
『やめなさい、もう。』
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縞(プロフ) - ゆきえもんさん» ご指摘ありがとうございました。修正しておきます。 (2021年1月28日 16時) (
レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆきえもん - 33､34に使われている『役不足』は「能力に対して役が不足している」という意味なので『力不足』か造語ではありますが『役者不足』の方が合うと思います(後者は誤用だとツッコまれるかもしれませんが…)。とても好みの作品なのでこれからも応援しています。 (2021年1月27日 23時) (レス) id: eb1315ed8d (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ* - 初コメ失礼いたします。 チューベローズの続編が見たいです。大きくなった恵君との絡みや他のキャラとの絡みが見てみたいです。 (2020年5月17日 19時) (レス) id: cd2ef48f8b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 初コメ失礼します。チューベローズの初恋の続編を見てみたいです！よろしくお願いします。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 2503e394d8 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 初コメ失礼します。しにたがり姫の方も好きで続編を是非見たいのですが、チューベローズの大きくなった恵などを見てみたいです！よろしくお願いします！ (2020年5月17日 8時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：縞 | 作成日時：2020年4月24日 15時
