チューベローズの初恋【呪術廻戦】 (ページ29)

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立ち塞がろうとしてくる呪霊も呪術師もほとんど傑に押し付けて
ただ先輩の匂いがするところへ全力で向かう

近づくたびに呪霊の数も増え
僅かに感じ始めた呪力はもう弱々しく揺れている

「東京校の学生だな！！止まれ！！」

「任務の妨害は規定違反だぞ！！」

「黙れよ。」

横から斬りかかって来る呪術師2人に
呪力操作も雑把な「蒼」を放ち一帯ごと吹き飛ばす
傑の呪霊を一匹巻き込んで睨まれるが今は無視して
小さく見え始めた特級呪霊の姿にさらにスピードを上げた

大きく鋭い爪を先輩に突き刺して持ち上げ
溢れ落ちる血を笑いながら啜っている

足元にはお零れ目当ての呪霊が群がり
自分の獲物にちょっかいを出された呪霊は怒り出し
踏み潰したり、蹴り上げたりしている

：

：

―…返せ、―

布がずれて露わになった先輩の目は霞んで光が映っていない
もう呪力もほとんど感じられない

抜いてしまうと出血は増すため爪は刺さったままで
呪霊の手から先輩を剥ぎ取り少し距離を取る
抉られた脇腹からは血が止まらない

「お願い、先輩。…死なないで。返事してよ。」

制服も手も先輩の血で真っ赤に染まっていく
何度呼びかけても口は開かず
どんどん目は暗く霞んでいく

どうすればいい、
どうしたらまたその瞳で俺を見てくれる、

「悟！もたもたするな！！早く硝子の所へ！！」

「…ッ」

傑の声で我に返り
先輩を奪い返そうと迫って来る呪霊を上に飛んで躱した

まだ暖かい体温を感じられるように
なるべく優しくしっかりと抱き寄せて
夜蛾先生と硝子が待つ森の外へ急いだ