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石川(?)side
戸惑いを隠しきれないお揃いの目が僕を射抜く、僕は苦笑した。
僕は僕だ、それ以上でなければそれ以下でもない存在だが、僕は今1:4の割合で分かれていて、1の方が僕だ。
大事なことは八割の彼が全て持って行ってしまったので分からない、あるのはただ藤原花流を守るという使命。
ある意味僕は僕自身を現した生き物なのだろう、大事な感情も、記憶も、そもそも何故大事だったのかも覚えていない、全てを合理的に判断するAIとさして変わらない。
けれど分かれてから、その大事という言葉が少しずつ分かってきたのは僕だって驚いている。
勿論人間や、それこそすべての人間には学習することが出来る本能みたいなものが備わっているのだ、僕が彼と別れたからってそれは変わらない。
けれど、問題はそこじゃなかった。
そこじゃあなかった、そして僕は疑似的な感情を持って動いた、あの喫茶店で見せた表情、夜に感じた疎外感、僕は僕の筈なのに、石川タクの筈なのに、坂口吾郎であることを良しとした。
許容してしまった、僕は石川タクなのに、彼女といつも一緒にいる彼は石川タクで、僕は坂口吾郎。
坂口吾郎として、僕は藤原花流へと独占欲を向けた。
独占欲、独占欲。
うん、言いえて妙、僕のこの感情に付ける名前は独占欲に相応しい。
だから人を殺した八割の僕に敵意を向けてみたりしたし、彼女なことが大好きな僕に諦めるように言った、彼女を守るためならどんな役でも喜んで受けた。
彼女の為を思うなら八割の僕に怒りをぶつけることも出来た、殺すことだってできたかもしれない。
僕は坂口吾郎だ、僕は君を守るために生まれた、さながら人造人間。
ごもっとも、僕の魂が例え本物でも僕は君だけの人間だ。
君が死ねというなら僕は喜んで死ぬだろうし(まあ優しい君のことだからそんなこと言わないだろうけれども)欲を満たしたいというなら食べるなり何するなり好きにさせてあげるだろう(もちろんそんなことも言わないだろう)。
ああ、人の世は悲しいな。
まさかどちらとも、死んだ後も同じ人が好きだなんて。
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - 517さん» 517様、閲覧及びコメントありがとうございます!長かったでしょう(苦笑)そう言って頂けるととてもありがたいです。更新は停滞気味ですが気長に待って頂けると嬉しいです! (2021年3月31日 22時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
517(プロフ) - とっても面白くて最新話まで一気に読み進めちゃいました! (2021年3月31日 1時) (レス) id: a380db26d5 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - はい。楽しみにしてます。 (2020年10月17日 8時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ひかりさん» 閲覧及びコメントありがとうございます!SCPご存知の方中々いらっしゃらないですよね……。SCPで何か書けたらいいなぁと思っています(笑)改めて、ありがとうございました! (2020年10月16日 23時) (レス) id: 6e12f91009 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - こんなところでSCPを嗜んでいる人に出逢えるとは思ってもいなかった (2020年10月16日 22時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時:2020年3月31日 9時