きっとまた逢える 4 (ページ35)

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148 初めてのキスページ35

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嬉しかった。

泣きたいくらい嬉しかった。

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彼が家庭教師としてうちにやって来る日を、指折り数えて待っていた。

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受験なんて、親の意向に沿うため。

自分の夢への気持ちに蓋をして、カモフラージュするためのものでしかなかったけど。

それでも彼と過ごせる時間は待ち遠しくて、私はそのために勉強をしていたといってもいい。

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でも、この特別な時間は今日限りで終わってしまう。

そう思っていたのに…

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「…家庭教師とその生徒、っていう関係は終わってしまうんだけど。

いい機会だから…その…俺と、付き合ってくれませんか」

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一言一言、ゆっくりと言葉を選びながらそう言った彼の目は、照れ臭そうに伏せられる。

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そして、その綺麗な人差し指で彼が自分の唇に触れるいつもの癖を見て、私が照れ隠しで真似をすると。

彼が瞳を甘く輝かせて私を睨んだから、二人で笑った。

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「…俺なんかじゃダメかな」

「まさか！！そんな」

「好きなんだ」

「…私も、です」

「え、じゃあ、俺の彼女になってくれるの？」

「…はい、//」

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緊張で震えて、ハイ、としか言えなくて。

二冊の紙の束をギュッと胸に抱きしめた。

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頬っぺたがかっかと火照る。

きっと、茹で蛸みたいに赤くなってる。

恥ずかしい…

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初めての予感に、ドキドキがどんどん加速していく。

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でも、下にお母さんがいる。

早くリビングに戻らなきゃ変に思われちゃう。

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「…もう、下りなきゃ。お母さんが」

私が、部屋を出ようとすると。

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「待って」

彼は私を、参考書ごと抱きしめた。

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彼の柔らかい唇が、私の唇に重なる。

びっくりして、私はギュッと目を瞑った。

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そして一度離れたそれは、またすぐにもう一度ゆっくりと重なる。

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ぎこちない、私の初めてのキス。

初めて恋をした、大好きな人との幸せ過ぎるキスに、目の奥が熱くなった。

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「………たよ」

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「お客さん、着きましたよ」

タクシーのドライバーさんに声をかけられて、私は目を覚ました。

窓の外を見るとバーの入り口の前にタクシーは停まっていて、ハザードランプが点滅している。

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「あ…すみません」

バッグの中からお財布を出そうとして、頬にひんやりとしたものを感じてそこに触れる。

涙の筋が、そこにあった。