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『先生…、!』

人気のない教室。
たくさんの寄せ書きがされてある黒板の前に、やはり彼はいた。




「まだ居たのかァ。」

ゆっくりと近寄ってくるその姿を映す視界が、段々と滲み始める。
ほろほろと零れ落ちるそれを見ても、彼は拭ってはくれない。





『好きです、やっぱり先生が。』
「ありがとなァ。けど、」
『私が、生徒だからですか。
…それとも、大事な人がいるからですか。』


私の問いに、彼は答えずに少し困ったような笑みを浮かべた。
それは、答えが後者だと、そう思ってしまうのは容易な事で。







『…だったらせめて、想い出をください。』


了承も得ずに飛び込んだ先は温かくて、爽やかな香水が香った。
彼とどうこうなりたいとか、きっとそういうことではなかった。だけどどこかで、彼をもっと感じたい、満たされたいという欲があったのだと思う。
…そして、彼に愛されている“幸せそうなあの笑顔”に対しての劣等感や嫉妬心も。



やんわりと肩に手が添えられて、身体が離される。
顔を上げた先の彼はゆっくりと、首を横に振った。



『…なんで?
誰も見てないし私、言ったりしません。』
「そういうことじゃねェよ。」
『でも、』
「…ありがとなァ。」



優しげな瞳に、力が抜ける。
それはきっと、彼なりの最大限の譲歩なのだろう。














『ずるいよ、先生…。』

彼は……、私が好きになった人は。
私にも彼女にも、どこまでも誠実な人だった。







おわり

作者より(唯梨)→←ー2



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥 , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる!待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ!爆速過ぎて吹いたけどね!笑 いつも感謝ァ! (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…!って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました!今後ともよろおねでっすー💁🏻‍♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:京華/唯梨/羽糸/ひよ/あさひ x他4人 | 作者ホームページ:ありません  
作成日時:2022年9月21日 11時

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