２、 ページ2
.
『あの……もし…？』
「………あァ？？」
『あ、生きてて良かった。』
「るせェ、さっさと失せろォ。」
『あの、もし良かったら、これ。』
廃屋の軒下で仮眠を取っていた俺にそう言って差し出された握り飯が入った包み紙。女は酷く心配そうに顔を歪めちゃいるが……有難てェ。
渡された握り飯を即座に貪る。背に腹は代えられねェ。まだ温かさの残った飯を矢継ぎ早に口に入れる俺を見守る女は『ゆっくり食べて下さいね』と足早にこの場から去って行った。
＊
『あ……貴方、もしかしていつかの…？』
「………」
野良で鬼狩りをしていた俺ァ、粂野とか言うお節介野郎の紹介で師を得た。今この手にある日輪刀の存在なんて知らねェ、ただ陽光が昇るまで必死に時間との戦いをするしか術が無かった俺ァ「水を得た魚のようだな」と笑う師の元から最終選別を経て鬼殺隊士となっていた。
弟妹達を食わせる為、働き通しだった頃からしたら真っ当な給金を貰え、憎き悪鬼の情報も通達されるこの生業は悪くはなかった。
『こんな場所で寝るなんて……帰還されたら何時でもお声掛け下さい！私共は鬼殺隊士様方の休息の場を提供しているのですから…！』
「飯は此処で食う。」
『こんな軒先でいけません！さぁ、湯浴みなさって下さい。その間に朝餉の用意をしておきますから。』
与えられた鴉に藤の花の家紋が目印の屋敷に行けと言われたが、どうしてもその敷居を跨ぎ、迎え入れられ物腰の柔らかな亭主らからのもてなしを受ける気にはなれなかった。絆されたく無かった。温かな飯や湯浴みは有り難かったが俺ァそんな情を受けていい人間じゃねェ。
鬼になっていたとはいえ、母親を殺め、家族を亡くし…あったはずの日常が無くなったのに新たな温かみのある生活なんざを受け入れ、それに慣れる事をしたくは無かった。
『貴方とは昔お会い致していますよね？』
「あ？………知らねェ。」
『すみません、人違いでしたか…あ、ほら！湯浴みなさって下さい！傷は深くありませんか？後で包帯をお持ちしますので。』
「……別に大した事ねェよ。」
大方の人間は俺の人相や言葉遣いに恐れをいだき、必要最低限で身の回りの事を世話してくれていたが、コイツは…
あの握り飯の女か。
知らねェ振りはしたが記憶力が悪かねェ俺は、すぐさまあの野良隊士だった頃に一度だけ出会っていた女がこの家紋の屋敷の娘だったのかと思い出した。
『傷が痛むようでしたらお背中流しますからね！』
「頼むかボケェ！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 118人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユリア(プロフ) - ねぇえええええまって私も聞いてない久々ツク開いたらなんなのこれ何で呼んでくれな(死) (2022年11月1日 22時) (
レス) id: 5f1067fe3a (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - みおさん» ありがとうございます💖もう少し更新続きますので楽しんで頂ければ嬉しいです💖感謝ァ！ (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - あさひゆうひさん» あさひの新作通知もずっと待ってる！待ちすぎて舞ってる💃唯梨さんの実弥読めて私も嬉しかったよ！爆速過ぎて吹いたけどね！笑 いつも感謝ァ！ (2022年9月25日 20時) (レス) id: 9cf14e7eab (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - みんなお祝いコメントありがとうっっっ🥰❤️もう書かねェ…！って思ってたけどみんなのおかげで創作意欲が湧きました！今後ともよろおねでっすー💁🏻♀️❤️❤️ (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 奏海さん» かなみちゃんありがとうね🥰❤️色々落ち着いて戻ってきちゃった🧡🧡🧡🧡 (2022年9月25日 18時) (レス) id: e4ce53ad81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：京華／唯梨／羽糸／ひよ／あさひ
x他4人 | 作者ホームページ：ありません
作成日時：2022年9月21日 11時
