【A3!】雨、やまないね。【碓氷真澄】

05 ページ5

.




「真澄さーん」

「………………」



はぁ…。


例のごとく、帰りのSHが終わっても
真澄は机で寝てる。

こんだけ寝てるのに、定期テスト毎回5位以内なんて羨ましいを通り越して不思議だよ。



ﾄﾝﾄﾝ。



真澄の肩を叩く。



「ん……」

「おはよ、真澄」

「…………朝？」

「違います。もう放課後だよ」



ほら、早く行くよ、と真澄のカバンを持つ。

私は真澄のお母さんか何かか。


まだ少しボーとしている真澄を連れて
学校を出た。



そういえば真澄と放課後どこか行くなんて久しぶりかも。



家が隣だし毎日一緒に帰るけど、
真澄は早く帰って寝たいみたいで真っ先に家に帰ってる。




「久しぶりだね」



少し嬉しくなって
真澄に問いかける。

案の定真澄は、



「ん？何が」

って冷たいお返事。



「放課後どっか行くのだよ！」



ちょっと拗ねてみた。


どうせまた生返事しか帰ってこないと思うけど。




チラリと隣を歩く真澄を見ると、

「ん。そうだな」

って、




笑ってた。



ほんの。ほんの少しだけど。




それが無性に嬉しくて。





「…ふふ」

「何笑ってんの」

「なーんでも！ねね、写真撮ろうよ！」



そう言いながらカメラを起動する。



「嫌だ。今日のAテンション高い。気持ち悪い｣

「失礼だなぁー。ほらほら、はい！チーズ！」




ﾊﾟｼｬｯ




嫌がる真澄を強制的に引っ張って、ピース。


写真を見ると、いつものように無愛想な真澄と嬉しそうに笑っている私の姿。



いや、私顔緩みすぎでしょ。




「Aニヤケすぎ」



真澄。何その『うわ…』みたいな顔。




いいもん。

久しぶりの真澄との写真だし。



そう思いながら、
私は真澄にバレないように
画面越しの真澄の頭を撫でた。




胸がｷｭｳってなるこの瞬間。




「…好き」




またバレないように言ってみる。




「A、早く歩いて」




ムッとする幼なじみに、

「はいはい」

と返事をしながら私は携帯をしまった。





この時が一番幸せだったな。





後に私がそう思うようになることなんて、
もちろんこの時の私は知らなかった。






もう少し早く言ってればよかったかな。




.

06→←04

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す