らずべりー。6 ページ6
____ Banri ____
「 なぁ、監督ちゃん 」
声のトーンを変えた。
それをわかってのことか、監督ちゃんはビクッと肩を揺らせた。
きっとこれは、至さんのせいだけど、至さんのせいじゃない。
そんな気がした。
「 そろそろ、聞いてもい？ 」
今度は、ちゃんと答えを待った。
彼女にとって、そして至さんにとって。
俺は一応、部外者だ。
全く関係ない。
でも。
「 …皆に内緒で、至さんと付き合って、ました
……万里くんはわかってたみたい、だったけど 」
「 まぁ、そこは知ってたけど…
あと2〜3人は気付いてるだろーな 」
「 ……それで昨日、…至さんに…… 」
また、監督ちゃんは泣き出す。
彼女は、俺らの前では" 監督ちゃん "であり続けた。
いつも笑顔で、演劇バカな、MANKAIカンパニーの総監督を。
でも、監督ちゃんは、普通の女だった。
恋もする、もちろん、泣く。
「 …それは、監督ちゃんから？」
「 ……っうん、」
少し黙って、もう一度問う。
「 …そか
……じゃあ、何で？ 」
「 …っ、私は、……MANKAIカンパニーの監督だよ…っ
…至さんが……好き…、でも、他の皆の事も大好きなの…っ、
……それから…っ、監督なのに、……そんなことしてていいのかなって………思い始めて…っ、
っ、至さんといるの、楽しかったけど……っ、少し罪悪感も出てきて………っ
考えれば考えるほど……っ、… 」
" 監督なのに、そんなこと "
「 ……ん。いーよ監督ちゃん
もう、いーから、ちょい落ち着こーな 」
小さな背中を擦った。
ぼろぼろとこぼす涙を、ただ、拭いもできず、止めることも、叶わない。
きっと、この涙を止めれるのは至さんだけだから。
なんとなく、そんな気がした。
少しだけ、悔しかった。
部屋の窓を僅かに開けて吹き込んでくる冷気が、熱くなった目頭を冷ました。
「 監督ちゃん、苦しかったんだな 」
演劇のおかげで上手くなったであろう、笑顔。
バレませんように。
「 大丈夫
きっと至さんは、わかってっから 」
珈琲が、苦かった。
冷めて、温かった。
気付かせてあげることは、できるだろうか。
「 だから、泣くなって 」
監督ちゃんも、恋はしていいのだと。
.
Title 6ほろ苦コーヒーと、恋の惨めさ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
