らずべりー。5 ページ5
____ Itaru ____
コンピューターの、画面の明るさ。
それだけが、部屋の照明。
いつもなら。
ベッドの隣にある小さな照明だけを点けて。
でも、俺はその明かりより遠く、ほぼ暗闇に近いソファーに寝転んでいる。
暗く、12時を回りそうな、深夜。
ぼうっと眺めるのは、遠くのぼんやりとした小照明。
「 …… 」
昼くらいから何も食べずに、今まで。
臣から貰ったお菓子を今やっと手にして、口にする。
口の中に広がった、甘酸っぱさ。
良くできた、綺麗な赤のラズベリーマフィン。
ぽろりとこぼれ落ちた、認めがたい雫。
24にもなって、男泣きなんて。
「 ……虚しすぎだろ… 」
自虐的に笑ったら、その虚しさは更に増えた。
泣いてらんないのに、止まらないのだから。
「 …あー……、わろ、…かっこ悪、… 」
目の前に常にあった、笑顔。
いつの間になんとまぁ、どれだけそれに執着していたことだろうか。
「 ……っ、」
控えめな、オトナの涙。
それは酷くしょっぱかった。
ラズベリーマフィンの味は、更に甘くなった。
それが酷く、虚しかった。
『 イタル 』
不意に、扉の向こうで聞こえた声。
その声に跳ね起きて、叫んだ。
『 入るネ 』
「 入るな…！！！！！ 」
俺の声は、届かなかった。
いいや、受け入れられなかった。
「 …イタル、泣いてるネ？」
「 ……入るなって、…言っただろ 」
どんなに無惨で、惨めな姿だったろう。
カッコ悪い、大人の姿だったろう。
「 …イタル 」
それでも、何も知らないであろう、そいつは
「 ごめんダヨ、イタル
朝から元気なかった、知ってたヨ 」
「 …シトロン 」
酷く、優しかった。
「 カントクと、何かあったネ…？」
内と外との区別には自信があったはずなのに。
何故、こいつは知っていたのだろう。
その時の俺には、そんなことを気にする余裕もなくて
涙を乱雑に拭って、その優しさを振り払っていた。
「 …シトロンには、関係ない
…そうでしょ？ 」
「 イタル… 」
「 ほっといてって、
わからないかな 」
不器用で、馬鹿で、最低だ。
.
こんなの、八つ当たりと、何も違わない。
Title 5暗闇に隠す、オトナの涙。
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