らずべりー。33 ページ33
____ Itaru ____
「 … 」
「 … 」
いい大人が二人して、一言も交わさず
12時を回る深夜、マグカップを片手に
ベッドにそれぞれ座った状態で、壁を1枚挟んで背中合わせ。
「 茅ヶ崎 」
「 …なんですか
先輩も俺に説教ですか 」
「 茅ヶ崎に説教とか、疲れそうだから嫌だ
頼むなら左京さんとかにしてくれよ 」
「 勘弁してください 」
冗談めいた声音の先輩に、乾いた笑いを浮かべた俺。
一言二言交わして、沈黙。
それを、繰り返す。
「 監督さんは三角に頼んでおいたから気にしなくていいぞ 」
「 …何も言ってませんけど 」
馬鹿なふりしているようで鋭かったり、
頭がいいふりして鈍かったり
そもそも鈍いのか鋭いのか、どこまで踏み込んでくるのかさえわからない奴さえ此処にはいる。
もとあと言えば完全に俺と監督さんのせいではあるが
そろそろいい加減に放っておいて欲しいのが本音。
どうしようもない。
こういうのは、消えるまで待つしかない。
いつまでも、毎日のように掘り起こされてしまえば、消えるものも消えるわけがない。
「 …用ってなんですか
明日も仕事ですよね、寝なくていいんですか 」
「 茅ヶ崎にそれは言われなくないな
いつもゲームして徹夜もするおまえに 」
「 そりゃそうでしたね 」
小さく、気付かれないように吐いたつもりのため息も、気付かれたのか先輩は笑った。
「 とんだ迷惑そうだな 」
「 …別に 」
「 あのさ茅ヶ崎 」
急に真面目な声になったと思えば、先輩が口にしたのは突拍子もないことだった。
奥底に眠っていた筈の若葉が、ひょっこり、芽を出す。
「 俺、監督さん結構気に入ってるんだけど 」
嘘か、真か。
顔も見えない、声音もいつもと変わらない。
先輩の考えてることを詠むのは、よもや不可能だった。
「 …それで？ 」
「 飽きないよな、監督さんって
コロコロ表情変わるし、馬鹿みたいで危なっかしい
好かれる理由もまあ、納得できる 」
「 …何が言いたいんですか 」
聞こえた小さな笑い声の後に、
先輩ははっきりと、こう口にした。
「 俺が監督さんを取っても
茅ヶ崎は何も思わないよな？ 」
「 ……、は？ 」
12時を指す時計の針の音だけが、その瞬間、その場に響いた。
Title 33深夜、略奪宣言。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
