らずべりー。31 ページ31
____ Itaru ____
「 三角はさ 」
夜になってもある程度賑やかな街の中で
ある程度の数が輝く星が浮かんだ夜空の下で
前をとん、とんと四角いコンクリートの道をひとつ飛ばしにリズムよく進む三角の背中に声をかけると
三角は後ろ向きで歩きながら、こっちに笑顔を向けた。
「 … 」
「 いたる？
な〜に〜？ 」
黙って俯いた俺の顔を覗くように、三角は立ち止まり、手を後ろに回して下から覗いてくる。
不思議そうに首を傾げ、笑みを浮かべたままの三角に、俺も笑みを返し、続ける。
「 三角、わざわざ俺を探しに寮から出てきたの？ 」
そう言った俺に、三角は一瞬きょとん、とした顔をして、
それから、含んだ笑みを俺に向けた。
「 言ったでしょ〜？
さんかく探し、だよ〜 」
「 …三角、理由がない日は夜、ほとんど寮から出ないじゃん 」
「 おれはいたるのこと、何も知らない
どうしていたるが今ここにいるのか
おれがいたるに何をしたいのか
おれにはわかんない 」
「 三角に分かんないものは、俺にも分かんないだろ… 」
「 だから、だーれも分からない
おれはたださんかく探しでここにいるし
いたるはただおれと一緒にさんかく探すのでおれと一緒にいる
おれといたるはただ、一緒に寮に帰る
楽しいから一緒にいる、けど、会ったのは偶然
おれはいたるじゃないし、いたるはおれじゃないから 」
珍しく真面目な事を言う三角は、まともな大人に見えた。
普段は、天真爛漫、自由奔放な子どものようなのに。
「 …そーゆーことにしとく 」
三角が本当に考えていることは分からない。
俺達で言うシトロンみたいに
最近入ったガイさんみたいに。
言ってみれば、東さんや先輩も分からない。
もっと深く考えれば、皆俺に見せていない、俺が知らない一面がある。
他人の本当に考えていることなんて、分からない。
完璧になんて、分かれない。
「 いたる、帰ろ？ 」
「 …さんかく探しは、もう飽きたの？ 」
「 暗くて、かんとくさん心配しちゃうよ 」
また歩き出した三角の背中は、何処かいつもと違って見えた。
「 …なんで監督さん出てくるわけ 」
「 だって、かんとくさんはおれたちのかんとくさんでしょ？
大事な人だから 」
そう言って握られた三角の手は、酷く冷たかった。
Title 31偶然か、必然か。
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