らずべりー。28 ページ28
____ Itaru ____
どんなに俺が願ったって
そりゃあ俺は神でもないし、運命なんか当然変えられない。
チート級の力も持ってない。
頭に焼き付いた光景は、うざったらしいほど離れない。
記憶でも消す能力かなんかがあれば、楽だろうに。
「 … 」
寒空の下で吐いた息が白く消えた。
今夜はネットカフェかどこかで時間を潰そうか。
今帰れば、冷静でいられるはずがない。
下手したら、万里を責めかねない。
監督さんに、八つ当たりしかねない。
子供っぽいと、笑うだろう。
でも、笑ってくれた方がずっとよかった。
どうせなら、俺は監督さんの前から消えた方が良いんじゃないか。
最近はそうも思い始めた。
いっそのこと、今日消えてしまおうか。
なにもすることなくただ暇で、
空を見上げて、とりあえず足を一歩、踏み出そうとした途端
何かが、誰かが、俺の手をがっしりと掴んだ。
ぎょっとして振り返った俺に、
とうの本人は笑って俺の名前を呼んだだけだった。
「 いたる〜！ 」
にぱっ、と笑ったその姿には
変わってる、という印象しか受けたことがない。
でも、悪い奴じゃなくて、凄く良い奴だってのはわかる。
「 …三角
どした、何でこんなとこいんの？ 」
「 きらきら三角探し〜？
いたる、いたるもする〜？
あれがおっきい三角〜！じいちゃんが言ってた！ 」
「 そか、でも珍しいな
三角、ふらっと何処か行くけど、夜には大体寮にいるから 」
「 いたる 」
もう一度俺を呼んだ三角の表情は
” 俺が苦手な三角 ” だった。
「 …三角 」
「 ばんりがいるから帰らないの？ 」
こいつは、果たして何処まで知ってるんだろう
変わっている奴だからこそ、読めない。
次の行動も、思考回路も、全て。
「 …なんで？ 」
「 寂しそうな顔してるから 」
「 それ、理由になってないでしょ 」
「 いたる、三角探し！
早くしないと、三角消えちゃうよ！ 」
俺の手を引いて走り出した三角が
何処まで知っていて、何故ここにいるのか
俺には、全くわからない。
それでも、三角を止める理由もなく、
俺はその手に引かれることにした。
夜の街へ、溶け込んでいった。
Title 28ふしぎっこの気遣いと夜の街
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
