らずべりー。3 ページ3
____ Banri ____
「 監督ちゃん 」
肌寒い風が吹く、夜のベランダ。
その小さな背中に、話しかけた。
振り向いた彼女は、泣いていた。
「 …… 」
俺の頭を過った予感、朝の様子、これまでの目撃情報。
すべてが繋がった。
「 監督ちゃん、聞いてもい？
至さんと付き合ってたろ 」
責めてるわけじゃなかった。
監督ちゃんは、驚いたような顔をした。
ぼろぼろと、止まらない涙をこぼしながら。
「 俺、見たんだけど
至さんが、監督ちゃんと歩いてんの
あの変装並の格好、監督ちゃんなりの精一杯だったんだろーけど
……化粧と髪型だけじゃ、俺は誤魔化されねーよ 」
少し雑に頭を撫でて、震える体を抱き締めて。
「 この劇団ってさ、ウルサイ奴多いじゃん？
だから、一人でも静かになると不思議と気ぃ狂うんだよ 」
寒さをその温もりで紛らすように。
誰にも言えない気持ちを、何かで隠すように。
「 笑えよ、監督ちゃん
辛くて、キツくても
んで、ゆっくり話してみ？
俺もちょーど、誰かと愚痴言い合いたかったんだわ
だから、ちょっと付き合ってくんね、監督ちゃん 」
笑って、涙を拭って。
どうか、笑って。
「 ここだと体冷える
珈琲汲んできてやるから、監督ちゃんの部屋集合な 」
ふわりと、自分の上着をその小さな体に掛けて。
この背中を、温もりの中へと押して。
「 ほら、日が変わんねーうちに鬱憤晴らしちまおーぜ、な？」
聞かなくたって、知っているような気がした。
彼女が泣いている理由も、ここにいる理由も。
「 …ただいまー 」
玄関で聞こえたその声に、耳を塞がせるように。
「 ……っ…、 」
「 監督ちゃん、声出すなよ 」
彼女の小さな手を引いて、部屋へと走る。
夜遅く、もう誰もいない廊下。
玄関から遠ざかるように走り、部屋へと彼女をいれた。
そして、監督ちゃんが座ったのを確認してから、
俺は部屋を出て談話室へと向かう。
そこに、至さんはいた。
「 あ、おつ。」
「 至さん、今日はゲーム＿＿ 」
" できませんから "
その言葉を遮るように至さんは言った。
「 今日体調悪いから、パス 」
その時の至さんの表情は、初めてみたような気がした。
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Title 32つの変化に涙と笑顔。
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