らずべりー。19 ページ19
____ Tenma ____
「 " ずっとずっと好きだった
けど俺は、お前を救えなかった……っ " 」
「 有りがちな悲哀モノだよねー。
しかも主役がこのポンコツ役者といったら更に 」
「 人が折角気遣って部屋から出て台本読んでんのに……何で全員此処にいんだよ…！！？ 」
部屋では、いつも" 集中できないうるさい "だのと怒るから、ベランダに出て読んでいたのに
いつの間にか俺の回りにはいつもの面々がいた。
「 天馬くん、王子様みたい…！！ 」
「 てんまかっこいー！ 」
「 黙ってればね。
大人の恋愛物語で、一人の女が事故で死んで
…ヒロインが、凹む主人公を慰めて結ばれる、
これの何処を見て有りがちじゃないって言えるわけ？ 」
いつも通り毒舌の幸に、後ろから宥めるように、長い腕は頭を撫でた。
「 まーまー幸、そーゆーもん 」
「 頭撫でんな…！！！鳥肌立ったでしょ！？ 」
「 おーおー、相当だな 」
夏組に、何故か万里さんは混ざっている。
「 つか三好さんは何してんすか？
さっきからひっとことも喋ってねーけど 」
「 …… 」
ベランダの椅子に腰を掛けて、ただひたすら何かをしている。
夜の暗闇に溶けるように、それは静かで、絵になるようだった。
「 ……、監督ちゃん？」
万里さんの一言に、皆一成に寄っていく。
俺達の目に入ったのは、一成のスケッチブック。
描かれていたのは、一人の女の、綺麗な笑顔。
万里さんは、それを食い入るように、
ただ黙って、じっと見ていた。
「 うわ、凄いリアル…！」
「 …さすが美大生って感じ…？
何で監督を描いてるかは謎だけど 」
「 かんとくさんかわいー！
そっくりー！」
「 …わわわっ……！？
ちょっとちょっと、皆どーしたの！？
ちょーびっくりした…！
っていうかセッツァー…！？
ちょっとガン見しすぎ！ 」
今更回りに集まった俺達に気付いたのか、一成は慌て出す。
「 …あ、いや、何でもねーけど… 」
「 ああっ、絵の中のカントクちゃんに見惚れちゃったとか！？
それともオレの絵が上手すぎやばたんってカンジ？？ 」
「 どっちでもねーよ… 」
少し様子がおかしい万里さんは、携帯が鳴ると逃げるように一成から離れ、ベランダを出ていった。
Title 19干渉できない透明な壁の先で。
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