らずべりー。16 ページ16
____ Banri ____
「 ねみぃー…… 」
「 あ、セッツァーおはぴこー！」
「 んあ、はよっす… 」
「 至さん！おはようございます！ 」
欠伸をしながらソファーに座れば、少し遠くから朝から元気な咲也の声が聞こえる。
対して俺は、昨日のが若干トラウマか何かで至さんに向きづらかった。
「 …至さんはざす、今日もはぇーっすね 」
「 …別に？ 」
至さんは、瞬時に普通を繕ったように聞こえた。
最初の間に、何かあったような。
「 監督さん、今日も帰り遅くなるから
だから臣、晩飯は用意しなくていいよ 」
遠くで至さんが、臣と監督ちゃんに向けた笑み。
「 えっ…、今日もですか…？ 」
「 …は、はい。了解です 」
＿＿＿＿ " 外面モード " だ。
「 じゃ、いってきます 」
「 い、いってらっしゃい………… 」
「 気を付けて 」
外面モードにしなきゃならないほど、
今の至さんには隠さなきゃいけないことがある？
「 ………やっぱ昨日の… 」
「 セッツァー！！今日の講義ご、ぜ、ん！！
いっそげー！ 」
「 あ"…！？
マジすか、待って飯だけ食うから… 」
朝御飯の、ちょっと洒落たトーストを
悪いとは思いつつ口の中に放り込んで、すぐ席を立つ。
食器の片付け様見えた監督ちゃんの横顔は、酷く痛々しかった。
きっと、監督ちゃんもわかっている。
至さんの外面モードに気付いている。
「 セッツァー！！ 」
「 今急いでっから…！！ 」
なのに、そんな監督ちゃんを気にかけるだけで何もしてやれない。
だからって他の奴は、至さんと監督ちゃんの関係を知っている奴がいたって、
きっと手出しはできずにいる。
大人というものはどうしてこんなにも、
回りを気にして生きなければいけないのだろう。
だからって、子供が何もかも自由に生きられるわけではない。
「 監督ちゃん 」
行く間際、監督ちゃんを呼んだ。
「 今日の夜、俺と二人でゲームしよ
監督ちゃんの部屋、行くから 」
これまでどれだけ、1つのものに執着することがあったろう。
執着といったって、悪い方の執着じゃない。
かけがえのない大切は、ずっと守るべきだと思った。
ただ、それだけ。
Title 16真冬のサンカクのジレンマ。
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