らずべりー。14 ページ14
____ Itaru ____
「 至さんおかえんなさい 」
「 まだ起きてたか
ただいま 」
「 …… 」
時計の針は、もう12時を回ろうとしている。
日曜なのに、少しも自由時間がなかった。
何て残酷な日曜だろう。
明日も容赦なく仕事はあるというのに
「 …たるさん、怒んないんすね 」
「 ……は？……、一応聞く。
…何で？ 」
ソファーに、珈琲片手に膝組みをする万里は、
俺にもうひとつ珈琲を汲んで差し出した。
それを受け取って聞けば、万里は部が悪そうに言う。
「 何でもなにも
わかってんだろ、朝の俺が監督ちゃんといたこと 」
「 ……俺と監督さん、隠し下手かよ
…別に、そんなんで怒んないけど 」
「 …何で？
嫉妬とかしねーの？ 」
DKの考えは、まぁわからなくもない。
1年でも、彼女は俺の彼女だったわけだから。
「 もー諦めついたし
……意味もない感情に執着したところで、自分が腐ってくだけだろ 」
「 何で？もう好きじゃねーってこと？」
万里は思ったよりも食い付いてきた。
それに自然と俺は自己防衛に徹していて
気付いたら、意思と異なって口を開いていた。
「 …誰がそんなこと言った 」
「 …、！」
驚いたように、万里は目を丸くして、
そして反らした。
「 ……、すんません 」
「 …違＿＿＿ 」
ドキッと、冷たい何かが背筋を走る。
俺は年下までも、傷付けてしまうのだろうか。
「 …俺がどう思ってたって、監督さんにも、万里にも、関係ないだろ 」
「 ……至さ 」
その口を塞ぐように、とんと頭に置いた手。
万里はそれに驚いたのか、凍り付いたように俯いた。
「 もー終わり。
明日学校だろ、早く寝ろよ 」
「 …、っす 」
万里は、優しい奴だ。
それは、結構前から知っている。
普段は生意気だし、口も悪いし、たまに敬語すら使わないけど
意外と他人を見て動いている事が多い。
それにきっと、やたら最近俺や監督さんに干渉しているのは、万里の良心。
でも、万里が何をしようと
俺が、監督さんを諦めたなら、全てが済む話。
監督さんを楽にさせてあげられるほど、俺は立派な男じゃない。
いつかはこうなるって、覚悟していた。
だから、大丈夫
Title 14優しさの水と油と、渦中の火種。
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