らずべりー。13 ページ13
____ Banri ____
監督ちゃんは酷くきょとんとして、俺を見た。
「 …これは？ 」
「 これって……どー見ても珈琲だけど？」
「 いや、それはわかるんだけど…？」
テーブルに珈琲のマグカップを2つ並べて
テレビをただ、見るだけ。
借りてきたビデオは、ホラー系。
監督ちゃんがあまりそういう系に弱くないのも知ってるし、若干味気ないといえば味気ない。
「 楽しくない？」
「 いやいやっ……そういうことじゃなくて…！」
「 っはは、知ってる。
監督ちゃんホラー好きだもんな 」
「 好きってワケじゃないけど……！
バーンって出てくるとこびっくりするし… 」
「 バーンって出てくるとこ笑笑 」
監督ちゃんには、ただテレビを見ながら珈琲を飲む。
日常的かもしれない。普通かもしれない。
でも、普通が幸せって、あるから。
口に出しては、絶対に言えないけど。
「 あ、コイツ脚本書いて徹夜明けの綴さんに似てる 」
「 どういう…！？ 」
「 あとこれは密さん 」
「 死体…！？！？」
「 なんか似てね？」
俺が笑えば、監督ちゃんは笑ってくれる。
「 ……っふふ、確かに、密さんってたまに、" 死んでるー！？"って叫ばれてるよね
似てる、かも 」
「 だろ？」
しょうもない話。
わざわざ3日間ももらってまで、するべき話じゃない。
けれど、ちょっとだけ。
「 あ、次これ
天馬の恋愛ドラマ 」
「 うわー、掘り出してきたね…
天馬くんが見たら転げ回るんじゃない…？」
「 これ、天馬が恥ずかしいって嘆いてたやつ 」
「 天馬くんが珍しかったよね
……、というか万里くん確信犯… 」
「 これも試練だ天馬 」
「 うわっ、初めからキスシーン…！？ 」
「 おー、やるじゃん天馬 」
しょうもないことで、けらけらと笑って。
それが、何処かでは普通で、何処かでは特別なものだった。
「 あーーー！！何でそこで諦めちゃうの…！！ 」
「 はははっ、監督ちゃんマジじゃん…っ
笑いすぎて…腹いてえっ 」
珈琲は、冷めてしまっていた。
けれど、顔は凄く熱かった。
冷めた珈琲が、丁度良く顔の火照りを冷ました。
時間が過ぎるのは、本当に早かった。
Title 13角砂糖1コにミルク少々、ほんのり甘め。
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