らずべりー。2 ページ2
____ Itaru ____
「 いたるん！！ 」
朝っぱらから、そんな大声に耳がキーンとなる。
「 …耳がしぬから大声勘弁 」
「 いたるんって彼女いる！？ 」
「 ゲホッ…… 」
朝の珈琲が気管に入って噎せ込む。
「 うわッ、監督…！！ 」
「 ごっ、ごごごごめん…！！ 」
さほど遠くもないキッチンで、何かが割れる音。
「 至さん…！！！ 」
名前を呼ばれただけでヒヤッと、ドキッとする。
「 な、なぁに監督さん 」
僅かに口を拭いて、笑顔で彼女を見ると、
割れた皿を持って涙目になっていた。
何が起こったのかは、普通に想像ができた。
「 ごめんなさい…！！至さんのお皿ひとつ割っちゃいました…！！」
「 っはは、コレさっきの騒音の？
いーよいーよ、それ安物だし、あんまり使ってなかったし
てか、割れ物危ないでしょ監督さん、俺片付けるから皿洗い続けてて 」
「 いやっ、でも至さん仕事が… 」
「 片付けてから行っても間に合うからさ 」
立ち上がり、彼女が手にした皿を持つ。
「 あっ、ちょ、いたるん！」
「 ごめん一成、そーゆーわけだから 」
「 三好さーん、学校行きますよー 」
「 へ！？もうそんな時間…！？
セッツァー待って！！ 」
バタバタと駆けていく音。
「 ほら真澄くん……！！起きて……！！」
「 すう…… 」
「 寝ないで……！！！」
朝から騒がしいほど元気な学生の声。
ああ、今日もいつも通りだ。
「 よし、ミッション完了〜。
じゃ、いってきます 」
「 あ、至さん 」
その声は、彼女ではなかった。
「 ん？ 」
「 これ、作ったんで、腹減った時とかに食べてください
差し入れ、ってことで 」
小さなマフィンが女子のようにラッピングされた可愛らしい袋。
赤く色付いた、綺麗なお菓子だった。
「 苺？」
「 いえ、ラズベリーを少し。
珍しく冷蔵庫にあったんで 」
「 …へえ、」
「 じゃ、今日も気を付けて 」
今日の見送りは、彼女じゃなかった。
「 …ん、ありがと
いってきます 」
「 はい 」
あの優しい笑顔は、もうそこには無かった。
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Title 2失われた、想像以上にデカいモノ。
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