ブルーライトⅤ (ページ2)

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家を飛び出してから１０分ほど経ち、夜道をとぼとぼと歩くあたしは早くも途方に暮れていた。しかし一度離れたことが間違いだとは思ってない、夜の涼しい空気で随分と頭も冷やされた。
それにあのまま言い合ってもお互いに収拾がつかなくなりそうだった。そう思って颯爽と出たは良いものの、自分の家なんだからさっさと帰らないと彼らが逆に帰れなくなることに気付いたのだ。
ほんとバカなことしたって分かってるけど、こっちだって意地がある。くだらない。ムカつく。馬鹿みたい。あたしは何にここまで怒ってるんだろうと歩きながら改めて考えてみた。こんなことでカッとなってしまった自分に？言い争うことを選んだ幼さに？コラボを相談しなかったことに？やまとくんに分かってもらえなかったことに。

「やまとくんなんて……、なんて…」

あたしはこのあと呪いの言葉でも呟くのか。険しい顔で歩いていれば、何故か前からごうたくんが現れる。

「あーーーー！Aさんいた！」

「ごうたくん…」

子供みたいに全速力でこちらに駆け寄ってきたごうたくんの姿に、あたしは安心したというよりも無意識にこう思った。なんでやまとくんは来ないのだ。

「よかったぁあ…！まじ心配したんすから…！」

しかし額に汗を滲ませた彼を見て、そんなやましい気持ちは一瞬で消え去った。

「…そうだよね。家戻るね」

迷惑かけてごめんなさいと頭を下げれば、ごうたくんは息を整えながらスマホをポケットから取り出す。

「ほんと、無事でよかったです」

スマホを手に取り急いで誰かに電話をかけるごうたくん。やまとくんだろうなと勘ぐりつつもマンションの方へ向かうことを選ぶ。

「もしもし！はい、Aさんいました！もうそんなに怒ってないみたいだし、今から戻ります」

それをあたしの前で言う辺りごうたくんらしい。笑顔で電話を切った彼はその顔を保ったままこちらを振り返る。

「やまと先輩とゆうまさん、あのあとすぐに時間ヤバいからって帰ったんすよ」

「あぁ…そうなんだ」

やまとくんがいないことを聞いて何気にホッとする。追いかけてきてくれないと知った以上、このあと改めて彼と顔を合わせるにはまだ気持ちが整っていない。

「だから今はゆうたさんが部屋にいて、Aさんの家の番犬してくれてます」

無茶苦茶したあたしを、なんとか笑かそうとしてくれる彼の優しさが心に沁みる。探しにきたのがごうたくんでよかったかもしれない。

「あの時、どうすればよかったんだろうね」

苦笑いしたあたしは誰に言うわけでもなく、そう呟いた。