帰宅します ページ7
センラさんに頭をポンポンされて一瞬思考が停止した脳をなんとか起動させ、今日の治療費を払う払わないでひと悶着あり、センラさんが折れてくれないので、結局私が諦めて今日かかった分の治療費を受け取った。
(センラさんに払わせてしまった……)
そんなことさせられない、と思っていたんだけど、センラさんが諦めてくれる気配が全くなくて。
さらに私はあることに気がついてしまったのだ。
(たしか今日は21時から浦島坂田船で実写生配信するって言ってたはず……)
結構長いこと揉めてたみたいで時刻は20時。
1時間も話していたみたい。
生放送まであと1時間くらいしかないのに、センラさんがここにいていいわけがないことに気づいてしまったのだ。
「ほんならAちゃん送ってくで」
「いやいやいや!センラさんはもう行かないとだめですよね!?」
私、なんでこんなに推しに突っ込み入れてるの?
推しの前では可愛くお淑やかでいたいのに……。
こんな風に話せるチャンスなんてもうないかもしれないのに……。
「あー、配信のこと気にしてくれてるん?それやったらさっきうらたんに遅れるって連絡したから大丈夫やよ」
こてん、と首をかしげる。
いや、推しが可愛すぎる!
「今利き手がこんなことになってしまったので、明日休みなので今日は実家に帰ろうかと思ってるんです」
「実家は少し遠いので、そこまで送っていただいたら遅刻どころか、本当に配信の最後にも間に合わなくなってしまうと思います」
なんとかセンラさんを説得しようとする。
「そんな遠いんやったらなおさら……」
そう続けるセンラさんの言葉を遮って伝える。
「私、今日の放送が実写だって聞いてすごく楽しみにしてたんです。きっと他のcrewも楽しみにしてます!そこにセンラさんがいないのは嫌です」
そう言って目を見る。
驚いたように目を大きく開いたセンラさんとしばらく見つめ合う。
そろそろ恥ずかしくて限界なんだけど…、と思ったところでセンラさんが口を開いた。
「……ほんなら家に着いたら必ず連絡してくださいね」
納得してくれたことにホッとして、「はい」と笑顔で返す。
「駅までは送らせてな」
そう言われて並んで歩き出した。
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作者名:蒼野真白 | 作成日時:2020年4月13日 10時