折原side ページ5
追加のところに出たのは猫のアイコンと彼女の名前。
(Aちゃん・・・)
たぶん彼女の画面にも同じように俺の名前とアイコンが出ているだろう。
しかし、彼女はそれを見て固まっていた。
そしてなにか呟いた。
「どうしたん?」
不思議に思い声をかけると、Aちゃんはガバッと顔を上げ俺にスマホの画面を見せる。
「軽率すぎます!!」
そこには“センラ”と名前が表示されていた。
そういや、最近は歌い手関係の人としか連絡先交換することなかったから活動名にしてたんやっけなぁ。
なんて考えていたら、Aちゃんが勢い良くしゃべり続ける。
「軽率すぎます、センラさん!私、crewでセンラ―なんですよ!」
あ、この子センラ―なんや、となんだか嬉しくなる。
「せっかくセンラさんだって気が付いてないフリしてたのに、全部水の泡です。」
「しかも私がさっきの子みたいなリスナーだったらどうするんですか?」
Aちゃんは俺がセンラやって気づいてて、折原として接してくれてたんやなぁ。
「Aちゃんはええ子やねぇ」
思わずそう言うとAちゃんの顔がみるみる赤くなる。
「えっ?名前呼び?いや、待って、ヤバイ・・・」
顔を押さえて挙動不審になる彼女。
「僕がセンラやって気づいてたのに、ちゃんと知らんフリしてくれてたんや」
「・・・自己紹介してくださった時も“折原千歳”さんだと名乗ってらっしゃいましたし、プライベートの邪魔はしたくなかったですし」
それくらいわきまえてます、と少し落ち着きを取り戻したAちゃんが言った。
めちゃくちゃええ子やん。
さっき俺に声かけてきて、Aちゃんを落とした子と比べるまでもなく、リスナーの鏡やな。
「それで、センラさん・・・じゃなくて折原さん」
Aちゃんは慌てて言い直す。
「もうバレてるし、Aちゃんやったら大丈夫やと思うから、センラのほうで呼んでもらってええですよ」
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作者名:蒼野真白 | 作成日時:2020年4月13日 10時