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「えっと、僕、折原千歳といいます」
「え?・・・あ、私は蒼野Aです」
唐突な自己紹介に、思わず私も名乗ってしまった。
困惑していると
「連絡先交換しませんか?」
と、男性は提案してきた。
私はよくわからずぽかーんと呆けてしまった。
「えーっと、大丈夫ですか?」
男性・・・折原さんが顔を覗き込んでくる。
「な、なんで連絡先交換するんですか?」
「これから通院しはるんでしょ?そしたら治療費かかるやないですか。それをお支払いしなあかんし・・・」
えっ?治療費払う気でいるの?
なんで?
「えっと、・・・折原さん?がなんで私の治療費を払うんですか?請求する気もないですが、もし支払うとしたぶつかった子ですよね?」
前を見ていなかった私も良くなかったし、なんて思いながら折原さんを見る。
「あー、まぁ、そうやねんけど・・・」
言いにくそうに口ごもる。
なんとなく言いたいことはわかるけど、でもそんなことまで背負うことないのになぁ、と思いながら見つめ続けると、折原さんはやっと口を開いた。
「たぶん、あの子が走ってきたんも周り見ずに蒼野さんにぶつかったんも、原因は僕やと思いますから・・・」
推しが目の前にいたら興奮して周り見えなくなっちゃう人もいるよなー。
だからって逃げるのはよくないと思うけど。
「折原さんが原因だったとしても、やっぱり支払うとしたらあの子ですよね?折原さんが気に病む必要はないと思いますよ?ここまで付き添って頂いただけで十分です」
そう言って支払いをやんわり断ったんだけど、折原さんは「そうや!」と目を輝かせる。
「僕の中で支払わんっていう選択肢は無いんで、連絡先交換して通院のたびにやなくても後でまとめて請求してくれはるか、今少し多めに現金で慰謝料として渡すかどっちがええです?」
さも名案!と言わんばかりに私を見る。
「ちなみに渡そうとしている慰謝料はいくらほどで・・・?」
一応聞いてみると、
「んー、50万とか?」
と首をかしげる。
いや!多いだろう!!とびっくりする。
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作者名:蒼野真白 | 作成日時:2020年4月13日 10時