出会い ページ1
(階段ってやっぱり苦手・・・)
階段を上っているとどういうわけかふらふらとするような、少し平衡感覚がおかしくなるような、なんとも心もとない感じになる。
いつもは階段の端を上りいつでも手すりにつかまれるようにするんだけど、今日はおばあちゃんが手すりにつかまりながら上っていたので私は階段の真ん中を上っていた。
(あともうちょっと・・・)
そう思ったところで女の子の黄色い声が聞こえた。
足元ばかりを見ていたので上の様子を全然見ていなかった私は誰かとぶつかった。
ぶつかった相手が勢いよく走りこんできたみたいで、私はその勢いに負けてバランスを崩し後ろに倒れる。
(やばい)
とっさに頭を守った私は偉いと思う。
不幸中の幸いというか、私の後ろには誰もおらず他の人を巻き込むことなく私は転がり落ちていった。
頭を守ったおかげか意識を失うようなこともなく、だけど下についたときには全身の痛みに声も出なかった。
「大丈夫ですか!!?」
上から私を追いかけるように男の人が慌てて駆け下りてきた。
そんなに慌てたらあなたまで落ちちゃいますよ、なんて場違いなことを考えながら、でも痛みのせいで返事はできなかった。
目が開いてるから意識があるのは伝わってるだろうけど、大丈夫だという意思表示のために起き上がろうと動く。
「あぁ、動かんほうがええですよ。今救急車呼んでますんでそのまま横になっててください」
そう言って私の動きを慌てて制止する。
救急車が来るのなら、と大人しく横になっていることにした。
でもぶつかって私を落としたのは、たぶんあの黄色い声をあげていた女の子。
その子はもうどこにもおらず、かわりにこの男性が付き添ってくれる。
なんでだろう、と思ってちゃんと見れていなかった柔らかな関西訛りの男の人の顔を見る。
(なるほど。そういうことか)
そのマスクをしている男性の顔を見てなんとなく納得した。
(京都弁、やっぱりいいなぁ・・・)
なんて、そんなしょうもないことを考えていた。
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作者名:蒼野真白 | 作成日時:2020年4月13日 10時