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それから1ヶ月、藤ヶ谷先輩に会うことは1度もなかった。
もともと学年も違うし校舎も違うし、当然と言えば当然だが、行き帰りの電車の中を毎日見渡すのが癖になっても、1度も先輩の姿を見つけることはなかった。
あれは先輩の単なる悪戯で気まぐれ。
分かっているのに、あの日の出来事が頭から離れない。
むしろ時が過ぎていく程、藤ヶ谷先輩のことを考えている自分がいる。
一体どうしちゃったんだろう、私。
自習もあまり身に入らず、ノートを開いたまま窓の外をぼんやりと眺めながら、あの日の藤ヶ谷先輩の温もりや匂いや声を思い返してばかりいる。
『次はあんたから告白して』
鵜呑みにしちゃいけない、あんな言葉。
先輩はもう忘れてるかもしれないのに。
学習室からは芝生が植えられた中庭がよく見える。
放課後、数人でガーデンテーブルでお喋りしながら宿題をしている生徒、待ち合わせなのかベンチに座って本を読んでる生徒、寝そべっている生徒、皆木漏れ日の下で思い思い、楽しそうに過ごしていて。自分には縁のない世界。
その時だった。
中庭にやってきてソフトバレーボールを始める6人のグループ。
その中に、先輩がいた。
藤ヶ谷先輩が。
久しぶりに見る藤ヶ谷先輩の姿。忘れるはずがない。
心臓がドクンと波打つ。
先輩....
太陽の下で明るいほど輝く茶色い髪。
ワイシャツを肘まで捲くって、相変わらずノータイで、鎖骨が見える程開いた胸元。
相変わらずの校則違反。
時折響いた笑い声が3階のこの教室まで聞こえてくる。
クラスメイトなんだろうか。
先輩と親しげにハイタッチしている女の子達。
楽しそう....。
女の子の頭を小突いたり、尻もちをついた女の子に手を差し伸べて起き上がらせたりしている先輩。
そんな先輩の様子を見ていたら、突然胸に鋭い痛みを感じて、思わず胸を押さえる。
見ているだけで痛みは大きくなり、苦しくなっていく。
先輩がある女の子の肩を引き寄せて何かを耳元で囁き、それに頷く女の子。
嫌。嫌だ。
そんなことを思う資格なんてないのに。
見たくないのに目が離せなくて。
やがてその女の子に腕を組まれながら去っていく先輩。
この後は部活に行くのだろうか。
それとも....?
先輩の後ろ姿を見つめながら、酷く傷ついている自分がいた。
先輩と一緒に去っていった女の子は綺麗で、お洒落で、大人っぽくて、モデルみたいにスタイルが良くて、先輩の隣がとても似合っていたから────。
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R(プロフ) - 続編の下書き終わるの待ってます! (2020年7月16日 20時) (レス) id: 6721bb2d67 (このIDを非表示/違反報告)
ミィ(プロフ) - 私の好きな、女性に冷酷な太輔くん、ここにいました!女の子をとっかえひっかえみたいな。ドンジュアンみたいですね。やっぱりハマり役ですね。でも、物語はちょっとツラい展開になってきましたね・・・ (2019年9月14日 0時) (レス) id: 1dbee522b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» あやちゃん(TT)いつぶりだよっていうくらいの久々更新でごめんなさい。まだ読んでくれていたのですね涙。Fさんイイ男(あくまで自分的好み)に書きたいと思えば思う程出来なくて逃げました笑。ゆるゆるとですが頑張りますね(TT) (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» お久しぶりですw 悪い男なFさん私も大好きですが難しいです(TT)でもミュージカルのF様の素晴らしさに触発されたので再び頑張ってみようかと(><)。 (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 良かった、更新された(涙)ドンジュアンのおかげだね(笑)私も栞ちゃんと一緒でしろたんの描くメンバーみんな大好きです!しろたんが描く悪い男、すごいかっこいいのでこれからも楽しみにしています。 (2019年9月1日 12時) (レス) id: 307c8bd05d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年12月18日 7時