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「え、あのっ、学校!!」
「保健室記録に早退って書いときゃ平気だって」
「で、でもっ」
特待生なのに。
そんな勝手に早退なんてしたら後で絶対に叱られる。
「成績落とさなきゃいいんだろ?今日は正式な授業はねーし」
「あっ、でもっ、私は」
「早く、行くぞ」
「ほ、補導されたらっ」
「平気。どっかで着替えるから」
「私、着替えなんて持ってませんっ」
「任せてそこは」
無茶苦茶だ。
分かってはいたけど、先輩はやっぱりいつでも無茶苦茶すぎて、ついて行けない。
「特待生取り消しにでもなったら」
「だから成績落とすなよ。学校はそれしか考えてねーし。それに午前中で学校終わるところがほとんどだし補導なんかされねーよ」
私は先輩とは違う。
真面目にきちんとしていないと生きていく資格がない人間だ。
なのに抗えない何かが先輩にはあって、最終的にいつも拒むことが出来ない自分。
それは畏怖?憧憬?
無条件に美しいものに惹かれゆく人間の悲しい
どう足掻いても、醜く汚れた存在の自分が、何でこんなにも、眩くて、美しくて、輝かしい存在の目に止まって構われているのか全く分からない。
だから怖いのに。嫌なのに。離れたいのに。
見つめられると、その全てに囚われてしまう────。
*
初めて学校をサボってしまった。
特進コースは午後も授業があることを知らない先輩に言えなかった。
不安と後悔が渦巻く中、連れて行かれたのは渋谷にある、お洒落な隠れ家的なセレクトショップ。
「いらっしゃいませ。あ、太輔?お前学校は?」
藤ヶ谷先輩の知り合いなのだろうか。
お洒落な若い男の店員が先輩を見て顔を顰める。
「仕事以外でサボんじゃねーよ」
「もう終わった。ちょっと私服買わせて。リョウはこいつの服を適当に選んで」
そう言うと、私のことなど放っておいて自分の服を選びに行ってしまう先輩。
リョウ、と言われた店員が私のところへ近付いてきた。
「どんな服が好みですか?」
「え、あ、あのっ」
急に好みの服は?と尋ねられても答えられない。
店員が接客してくれるようなお店で服を買ったことも、自分の好みを基準にして服を買ったことも1度もないから。
「リョウのセンスでいいって。あ、なるべく予算は抑えて」
「俺のセンス?この子に?」
悩むように私を見る店員に、私は消えたくなるほど恥ずかしくなった。
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R(プロフ) - 続編の下書き終わるの待ってます! (2020年7月16日 20時) (レス) id: 6721bb2d67 (このIDを非表示/違反報告)
ミィ(プロフ) - 私の好きな、女性に冷酷な太輔くん、ここにいました!女の子をとっかえひっかえみたいな。ドンジュアンみたいですね。やっぱりハマり役ですね。でも、物語はちょっとツラい展開になってきましたね・・・ (2019年9月14日 0時) (レス) id: 1dbee522b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» あやちゃん(TT)いつぶりだよっていうくらいの久々更新でごめんなさい。まだ読んでくれていたのですね涙。Fさんイイ男(あくまで自分的好み)に書きたいと思えば思う程出来なくて逃げました笑。ゆるゆるとですが頑張りますね(TT) (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» お久しぶりですw 悪い男なFさん私も大好きですが難しいです(TT)でもミュージカルのF様の素晴らしさに触発されたので再び頑張ってみようかと(><)。 (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 良かった、更新された(涙)ドンジュアンのおかげだね(笑)私も栞ちゃんと一緒でしろたんの描くメンバーみんな大好きです!しろたんが描く悪い男、すごいかっこいいのでこれからも楽しみにしています。 (2019年9月1日 12時) (レス) id: 307c8bd05d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年12月18日 7時