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「ん?あ....起きた? ヤベ、俺まで寝ちまってた」
寝起きのカスカスの低い声。
「こ、こんなところ先生に見られたらっ」
「養護教諭は出張だって。他の先生は皆始業式中」
藤ヶ谷先輩はそう言って横から私の身体を抱きしめた。
「なんか前より細くなった?朝から貧血でぶっ倒れるとかお前ちゃんとご飯食べてんの?」
狭い保健室ベッドの中で抱きしめられ、背中をさすられる。
その優しい手の動きに泣きたくなる。
先輩の温もりから広がっていくこの胸の苦しさは一体何なのだろう。
「つかさ、やっと捕まえた」
「え?」
「付き合ってんじゃなかったっけ?俺等」
「あ....」
「忘れてんのかよ」
呆れたように溜息をつく先輩。
そうだった。私藤ヶ谷先輩に。
「あのっ!前言撤回させて下さい」
「やだ」
「先輩っ」
「何で?」
「何でって....先輩に私は相応しくないから....です」
「は?何で」
「.....」
「何でAがそれを決めんの?つか俺に女がいるから?」
「そうじゃ、ないです」
先輩の胸に顔を埋めたまま、一生懸命首を横に振る。
確かに気にならないわけじゃない。
でもそこに不満を言えば、先輩は彼女や他の女の子とも距離を置くだろう。
でもそれで問題の根本が解決するわけじゃない。
決してそない。
先輩と一緒に校門の外を歩いた僅か数十メートル。他人の悪意と蔑みがとても苦しかった。
けれど何よりも。
自分で自分のことが恥ずかしかった。
先輩と居ることで向けられる冷たい目や悪意を受ける自分を、何よりも先輩自身に見られることが恥ずかしくて、情けなくて。
そんな世界で生きている自分の現実を見られるのが堪らなく惨めで。
「もしかして夏休みの間に、玉森か北山のことでも好きになった?」
「え?」
「所詮アイドルだったら誰でもいいって女?お前も」
不意に抱きしめられていた腕が解かれる。
同時に取り巻く空気がガラリと変わる。
低くて凍った声にはさっきまでの甘やかな雰囲気は微塵もなくて。
「違いますっ、2人とはそんなんじゃっ!!」
「あいつらとはカラオケ行ったのに?」
藤ヶ谷先輩、知ってたんだ....。
確かに知っていてもおかしくはないけれど。
「一緒に勉強をしていただけです、そんなんじゃないです....」
思わず小さくなる声に、先輩の舌打ちが被さる。
「じゃあ俺ともカラオケ行ってよ」
突然、ベッドからガバッと起き上がった先輩が私の腕を引っぱった。
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R(プロフ) - 続編の下書き終わるの待ってます! (2020年7月16日 20時) (レス) id: 6721bb2d67 (このIDを非表示/違反報告)
ミィ(プロフ) - 私の好きな、女性に冷酷な太輔くん、ここにいました!女の子をとっかえひっかえみたいな。ドンジュアンみたいですね。やっぱりハマり役ですね。でも、物語はちょっとツラい展開になってきましたね・・・ (2019年9月14日 0時) (レス) id: 1dbee522b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» あやちゃん(TT)いつぶりだよっていうくらいの久々更新でごめんなさい。まだ読んでくれていたのですね涙。Fさんイイ男(あくまで自分的好み)に書きたいと思えば思う程出来なくて逃げました笑。ゆるゆるとですが頑張りますね(TT) (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» お久しぶりですw 悪い男なFさん私も大好きですが難しいです(TT)でもミュージカルのF様の素晴らしさに触発されたので再び頑張ってみようかと(><)。 (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 良かった、更新された(涙)ドンジュアンのおかげだね(笑)私も栞ちゃんと一緒でしろたんの描くメンバーみんな大好きです!しろたんが描く悪い男、すごいかっこいいのでこれからも楽しみにしています。 (2019年9月1日 12時) (レス) id: 307c8bd05d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年12月18日 7時