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あまり家にはいたくなくて、毎日のように朝も放課後も、学校の図書室、自習室、学習室などで勉強をして過ごす自分のことを、周りは相当の変わり者だと認識しているようだった。

最初の頃は自分のことなど全く眼中になく、単に関わらないでいてくれた人達も、いつの間にか悪意や敵意を持って接してきたり、辛辣な言葉を投げつけてくるようになった。

それは体育祭終わった頃から酷くなったような気がする。

理由は幾つかあると思う。

学年1位の成績を取っている為に、教師達がこの高校から初の帝都大への合格に期待を寄せて私のことを持ち上げるせいで、調子に乗っていると思われていること。

そして地味で垢抜けず他人に不快を与える容姿。

そんな自分が他人との接触を自ら避けていることも、他人の目には傲慢に映っているのかもしれない。

こうやって自己分析したところで、改善が出来ないなら意味がないのは理解っている。でも。

自己肯定感の低さや経済的理由など、色々な要因があることを他人に理解して貰おうとは思わない。

けれど自分も心がある人間だから、集団生活の中で悪意や敵意を向けられるのは正直とても辛かった。

そんなある日の放課後、いつものように逃げるようにして学習室へと飛び込んだ私の目に、信じられない光景が飛び込んできた。

それは教室のカーテンの前で女の子の腰に両腕を回して引き寄せ、キスをしている藤ヶ谷先輩だった。

橙色の西日差し込む教室で、逆光になって見えるその姿は、見惚れるぐらいに綺麗で、まるで映画のワンシーンのようで。

私は間抜けにもその場に立ち竦んでいた。

やがてゆっくりと離される唇。

藤ヶ谷先輩が冷たい目で私を一瞥し、女の子へと向き直る。

いつも一緒にいる女の先輩とは別の人。

タイプも全く違う純粋そうな可愛らしい女の子。

けれど共通しているのはとても綺麗な顔立ちということ。

再び交わされるキス。
女の子の方は私の方を気にしながらも、それでも懸命にそのキスに応えている。

深くなるキス。甘い吐息。乱れる呼吸。
静かな教室に不釣り合いな水音。

私の存在など忘れてしまったかのように、顔を上気させ、目を○ませ、キスに没頭する姿から目を逸らすことができなかった。

こんな風に時折舌を擦り合わせながら、唇を食み合うキスを見るのは初めてで。

互いの熱を引き寄せ出すような、煽るような、大人のキスに目の当たりにして

自分の身体が焼けるように熱かった────。

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R(プロフ) - 続編の下書き終わるの待ってます! (2020年7月16日 20時) (レス) id: 6721bb2d67 (このIDを非表示/違反報告)
ミィ(プロフ) - 私の好きな、女性に冷酷な太輔くん、ここにいました!女の子をとっかえひっかえみたいな。ドンジュアンみたいですね。やっぱりハマり役ですね。でも、物語はちょっとツラい展開になってきましたね・・・ (2019年9月14日 0時) (レス) id: 1dbee522b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» あやちゃん(TT)いつぶりだよっていうくらいの久々更新でごめんなさい。まだ読んでくれていたのですね涙。Fさんイイ男(あくまで自分的好み)に書きたいと思えば思う程出来なくて逃げました笑。ゆるゆるとですが頑張りますね(TT) (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» お久しぶりですw 悪い男なFさん私も大好きですが難しいです(TT)でもミュージカルのF様の素晴らしさに触発されたので再び頑張ってみようかと(><)。 (2019年9月1日 13時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 良かった、更新された(涙)ドンジュアンのおかげだね(笑)私も栞ちゃんと一緒でしろたんの描くメンバーみんな大好きです!しろたんが描く悪い男、すごいかっこいいのでこれからも楽しみにしています。 (2019年9月1日 12時) (レス) id: 307c8bd05d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2018年12月18日 7時

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