Crazy love

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この春、私は公立高校の受験に失敗した。

受験したのは県内でも御三家と言われているトップ校の１つ。
本来なら学内テストでも業者テストでも余裕で安全圏だったはずだった。

何が悪かったのだろう。

入試前日というのに機嫌の悪い父に延々と暴言を吐かれ、その後首を締められ、殴られたせい？



「ここの特進コースなら、余裕で３年間授業料免除の特待生になれるから受けてみろ」



家の経済的事情で私立校の併願受験はしていなかった私に、担任の先生が定員割れしている公立高校の２次募集よりも、私立高校の２次募集で特待生になる方が将来があると勧めてくれたおかげで、何とか高校に上がることができた。

その高校の特進コースは大学進学希望者の為のコースと銘打っているものの、実際は最近出来たばかりのコースで実績もさほどなく、偏差値もそれ程高くはない。

それでも高校浪人にならなかっただけ充分だった。



「大学進学でリベンジしろよ」



そう言って私を慰めてくれた担任に、丁寧に御礼の言葉を述べ、私は中学を卒業した。



＊



この高校は、県内では一番整った施設と設備を有することで有名な高校で

当然のことながら学費は高く、生徒は見るからに裕福で余裕のある家な子息子女ばかりだった。

身なりや持ち物、放課後の遊び方などでそれはすぐ理解できた。

彼等彼女等の生活は、私が生きる世界とは何もかもが違いすぎて。

だから当然、友達など出来るはずもなく、しかも特待生は部活とアルバイトは禁止。

となれば、自分にやれることは結局勉強しかなかった。

自ら周りとの接触を断ちたい気持ちもあり、放課後になると、毎日特進コース専用の学習室に籠って勉強に専念した。

するといつしか先生以外は私に話しかけてこなくなった。

厚みのある安いレンズの眼鏡をし、重い黒髪を２つのおさげにした、どこからどう見ても他の女の子達とは浮いている容姿。

校則を守っているだけとは言え、滲み出る垢抜けなさが、自分の醜い容姿と余裕のない経済故なのは明白だった。



「ブス」



それは物心ついた時からずっと自分に纏わりついてきた言葉だ。

かつては直接的に投げつけられていたその言葉は、年齢を重ねるに連れて陰口へと変化していった。

長年の経験は、周りが自分のことをどんな目で見ているか嫌でも気付かせる。

だけど。

人は裏切るけれど努力は裏切らない。
その言葉に縋りついて今まで生きてきた。



受験に失敗するまでは───。

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