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意識を飛ばしていたのはほんの僅かな時間だったのだろう。
ゆっくりと目を開ければ、私の顔を拭いてくれているミツと目が合う。
「ミ、ツ....?」
「ごめん、無茶苦茶したよな、俺達。買われてる立場の俺達が夢中になるなんてほんと有り得ねぇわ、ああ、まじでごめんっ」
きちんと深く頭を下げ謝るミツに、私はかぶりを振った。
「大丈夫」
「そんな顔で大丈夫、大丈夫ばっか言うなよ、何か胸が痛くなる」
そう言って顔を歪めるミツ。
大丈夫。
だってそれ以外の言葉を知らないから。
そうやって生きるしかなかったから。
蒼月の気持ちが独りになった今ならよく理解る。
いつも私に「大丈夫だ」と言ってくれた蒼月。
その言葉にずっと安心していた自分。
守られていた自分。
蒼月は大丈夫だって言うことしか出来なかっただけなのに。
大丈夫じゃないって口に出来なかっただけなのに。
私のせいで。
言いたくても。
ごめんなさい、蒼月。
叶うことなら会って謝りたい。
だけどそれは、叶うの?
蒼月....!
「....太輔は?」
「ああ、今トイレに行ってる。A今夜も泊まっていけよ」
「え?」
「俺、前にAに言ったこと本当だから。お前を抱きしめて寝るとよく眠れんの、って俺等、Aから貰うばっかだな」
自嘲めいた笑みで私を見るミツに、
「ミツっ、あのっ」
今なら言えそうな気がした。
訊ける気がした。
「....ここのi担当だった人のことなんだけど」
けれどその時太輔が部屋に戻ってきて、ミツが慌てて私の口を唇で塞ぐ。
「んっ」
「まだ襲う気かよ、もう止めろよ」
「藤ヶ谷には言われたくねぇ」
呆れたような太輔の声にミツも不機嫌になる。
「A帰るだろ?湯浴みは涼に頼んである」
「はっ?何でだよっ。俺等はしばらく2人でAを饗せって言われてんだぞっ」
声を荒らげるミツから顔を背ける太輔。
「朝まで北山と川の字で寝るとか有り得ないだろ?いつもならこの後は北山だけど」
不眠症で自分の家以外ほとんど寝付けない為、2人指名の場合は後戯をミツにほとんど任せて帰っていたという太輔。
「でも今夜は嫌だ。だからって3人川の字も勘弁だし。だから」
「お前、それ我儘っ──」
「分かった、帰る。太輔、涼君を呼んで」
「Aっ、何で、ちょっと待てって!」
慌てた声を出すミツの唇に私は指を当て、
「次は別々に指名しますってマネージャーに伝えて。勿論ちゃんとお金を払う客として来るから」
そう言って微笑んだ。
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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時