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「俺はお前が好きだよ。お前を守りたいし愛したい。それだけじゃ不服?」
恋人と妻っていう肩書き以外に、俺がお前にあげられないものはねーよ。
ジンが柄にもなく真剣な顔でそう言って、私を抱きしめたけれど、私はそれを素直に喜ぶことは出来なかった。
贅沢なのは分かってる。
ジンは私を守ってくれている。
愛してくれている。
そのことを疑ったことはない。
だけどジンが愛しているのは私だけじゃない。
ジンは決して口には出さないけれど、ジンが1番大切に想っている相手は間違いなく奥さんであって私ではない。
そんなジンが私にまで愛を注いでくれるのは、私の生い立ちと身体と心のイチブが欠けていることへの同情、庇護欲に他ならない。
成功者であり、富める者であり、余裕の証でもある庇護欲。
そんな愛でも充分だと思わなくてはいけないのに。
ジンだけを見て、ジンだけを想い、生きて行けないのは傷つくのが怖いから。
だから心を全部渡せない。
アイシテルなんて言えない。
「ジン、私はこのままでいい」
肩肘張って、強がって、誰のことも本気で愛せないままで。
「俺が耐えらんねーよ、長い間他の男にいいようにされてるお前のこと見続けて、何も感じないと思ってんの?」
「私があそこに入れるようにしてくれたのはジンじゃない」
「そりゃ、弟探しに躍起になってたお前の役に立つならって思ったからだけど....でもさすがにさ....嫉妬してねーわけじゃねぇから」
ジンの歯切れが悪いのは、妻子のいる自分が言える立場じゃないという自覚があるからだろう。
「自分勝手な男だろ、俺」
「それがジンでしょ」
「そういう男は嫌いじゃない?」
「うん、嫌いじゃない」
「なーんか、上手くあしらわれてんな、俺」
それでもさっきよりは機嫌が良くなったのか、ジンの表情が綻ぶ。
「男の方が結局単純なんだよ」
そう呟いて私の唇を啄むジン。
「信じないだろーけど、Aのこと、俺本当に愛してんだからな」
ジンと身体を重ねることは嫌いじゃなかった。
身も心も攫っていくように熱く、強く、それでいて安心させるように抱きしめてくれるから。
ジンに抱かれるとまるで自分が、か弱い女になったような気持ちになる。
だからこそ決してその愛に身を委ねてはいけないと、強く思う。
『孤独』は自分の防護服のようなものだから───。
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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時