Jin. ページ28
ぐったりする身体を引き摺るようにして、ドアの外で待機していたハイヤーに乗り込み、帰路につく。
ミツの現シンメで、たいぴーの愛称で親しまれている藤ヶ谷君は噂通りの人気で、既に予約は3ヶ月先まで埋まっていた。
なので、次に買うのは横尾君にした。
私の行動が花街のルールに反しているのは充分承知の上だった。
指名を1人に絞らないどころか同じグループの子達を買い漁って。
疲れて目を瞑れば、身体の至る所に残る裕太の痕跡が、僅かな痛みを伴って熱く疼いた。
朝までいてよ、と怒ったように言う裕太を振り切って部屋を出て来た。
どちらが騙して、騙されているのか、時々分からなくなる。
嘘と夢が織り交ざった、瞬間だけが真実の世界。
それでも私は彼等のことが全員好きだった。
「そんなの誰のことも好きじゃないって言ってんのと一緒じゃん」
裕太は吐き捨てるようにそう言ったけれど、それは違う。
虹楼の男の子達は、他の楼の男の子達とはどことなく違っていた。
ある意味嘘が下手で、不器用で、変に取り繕うことをしない普通の男の子達。
それでもこの過酷な競争社会を文句や愚痴を言いながらも、生き抜いて来ただけのことはある努力とプライドは、彼等をアイドルとして充分輝かせていた───。
「随分、重い愛だな」
私の身体を見たジンが大きな溜め息をつく。
「マーキングから俺のもんだっていう嫉妬の念をすげー感じる」
「ただの若気の至りでしょ」
苦笑する私の身体を撫でるジンの優しさはいつも泣きたくなる程残酷だった。
「普段、愛されることに慣れてる奴が本気で誰かを好きになった時って怖いんだぜ?」
ジンが私の額を小突く。
「誰か愛することを頑なに拒んでる奴が、本気で誰かを愛したらどうなるかも気になるけど」
「.....それって私?」
「他に誰がいんだよ」
「私は別に拒んでなんか」
「拒んでんだろ?本当は誰よりも愛されたい、愛したいくせに、誰も好きになったりしないってかっこつけて、いっつも肩肘張って生きてんじゃん、お前」
「やめて。ジンにだけは言われたくないっ」
欲しいって言ったところで困るくせに。
甘えて弱さを見せたところで、私の欲しいものは絶対にくれないくせに。
肩肘張らなきゃ、強がらなきゃ、独りで生きていくなんて出来ないから。
「俺がお前の全部を受け止めてやるからさ、こんなこともう止めねぇ?」
「それはジンの愛人としてだけ生きろってこと?」
訊けば、ジンが苦しそうに顔を歪めた。
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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時