* ページ23
「誰にも言いたくなかったことを、俺に言ってくれたAに、俺も少しだけ、な」
ミツが私の背中を優しく撫でる。
これがミツの手なんだろうか。
彼は真摯なことには真摯に向き合ってくれる安心感がある。
身体を重ねたりしなくても、何気ない言葉だけで易々とぎこちなさという壁を超えて、私の中に入り込んでくるミツ。
胸が苦しくなる。
怖い。嬉しい。怖い。
心を持っていかれたくはない。
「俺ね、本当は結構悲惨な家に生まれ育ってんのよ」
それはかつてジンが言っていた話と全く一緒だった。
事務所に入ると、すぐに社長の紹介で養子縁組させられたというミツ。
「義母になってくれた人は本当にすっげーいい人でさ、有難いって言えば有難かったけど」
そこまで言うと、ミツは「内緒な」と笑った。
「それってよくある話?」
「まーね。こういう仕事に就こうって思う奴は、実際金が必要な家庭の奴も多いの。勿論そうじゃない奴だって多くいるけど、子どもの時から合法的に稼げるって意味じゃ人気職業だから」
確かにそうかもしれない。
けれどお金が欲しいからと言って、誰もが事務所に入れる程甘い世界ではない。
J事務所社長の、少年達のアイドルとしての将来性を見る目には定評がある。
社長はその中でも特に将来有望な子に養子縁組を持ちかけるのだろう。
それ以外の子でも自力でパトロン見つけ、養子縁組して貰う子もいると聞いて、蒼月の名が違っていたのもそれが理由だと確信する。
「俺ね、事務所の人に自分の生い立ちとか全部調べられたんだけど、その時実は兄弟がいるって初めて知ってさ。ずっと一人っ子かと思ってたからすげー嬉しかったんだよね」
「兄弟....?」
「そ、妹。1歳の時に生き別れてるから会ったことはないんだけど。その妹の存在があるから、俺は今もこうして頑張れてんのかもって思う。勿論金はあった方がいいけど、あくまで手段であって目的にはなんないから。稼ぐだけが目的だったらとっくに挫折してたと思う俺」
「そうだよね....」
ミツの言っていることは痛いほどよく理解った。
私もずっとお金がなくて不幸だった。
だけどお金がある今が幸せだと思えているわけじゃない。
そこには蒼月がいないから───。
「そんなことまで私に話していいの?」
「ここでの睦言なんて、お互い真実かどうか分かんないのがお約束だろ?」
満足そうに笑うミツ。
でも私は理解っていた。
私もミツも真実を話していると。
きっとミツも───。
567人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時