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「ここで湯浴みをして頂くのですが申し訳ありませんがお荷物は全て預からせて頂きます」
そのことは予め聞いていたことなので私は黙って頷いた。
理由は盗聴、盗撮防止の為。
尻尾を掴まれない為の徹底した自衛。
所有者の趣味なのか、ここはまるで200年以上も古き日本の時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る程、現世とはかけ離れた世界だった。
「ねぇ、何しているの?」
脱衣所に入るなり私の隣で着物の帯を解き始めた少年に驚けば、少年は不思議そうに首を傾げた。
「何ってA様の湯浴みの手伝いを申し付けられているので」
そう言って帯を解こうとうするその手を慌てて掴む。
「ちょっと待って、あなた幾つ?」
「え?15です、けど....」
目の前で何の躊躇もなく裸になろうとしている少年に、私は首を横に振った。
「いつもこんな仕事を?」
「はい、まだ部屋持ちになれる資格がないので」
部屋持ち。
座敷でお客と寝る、という意味だろうか。
「年齢で?」
「はい、16からなんです、部屋持ちになれるのは」
「そう、だからあなたは湯浴み担当なのね。他にも色んな担当があるの?」
「ええ、まぁ、色々と、あの...」
少年が困ったように口籠る。
「そんなつまらない話よりも早く入りましょう」
瞬間、少年の着物が床にぱさりと落ちた。
一糸纏わぬ姿で立つ少年の身体を見ないようにして私は顔を上げた。
少し性急にあれこれ訊きすぎたかもしれない。
明らかに警戒心を宿した目で私を見つめている少年にしくじったかもと後悔する。
焦りは禁物だと必死に自分に言い聞かせる。
せっかくここまで辿り着いたのに。
子どもと大人の狭間という短い期間、少年から男へ移り変わる儚くて危うい色香を放つ少年達の需要は、きっと私が想像するよりも遥かに多いのかもしれないと、彼を見てふと思った。
常客の中にはただの富裕層だけでなく、権力に携わる者も少なくないはずで。
でなければ、いくら幾重にも慎重に自衛手段を講じているであろうとは言え、こんな簡単に法や行政の目をかいくぐり、郊外に違法な巨大遊廓を経営することなど不可能だろう。
アンダーグラウンドな世界は巨大権力者と繋がっていることがほとんどで、それだけにこっちも慎重にならざるを得ない。
危険人物だと目を付けられれば2度とこの場所に足を踏み入れることは出来なくなる。
失敗は許されない。
私は緊張を振り払うように大きく息を吐いた。
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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時