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「凪ちゃん、ジンは本当に頼りになるから素直に甘えるといいわ」

ママの言葉に私はかぶりを振る。

誰かに甘えることはしたくなかった。

自分が独りで立っていられなくなりそうで、
弱くなってしまいそうで怖いから。

「ジン....進藤社長とママはかつて恋人だったんですか?」

「違うわよ。さっきも言ったでしょ、客と商品の関係だったって」

「でもそんな風には全然見えません」

「それはジンが強いから。優しいからよ」

ママの言っていることはよく理解らなかった。

「でも私だってジンを商品だなんて思ったことはないけれど」

懐かしむような目をしてママがグラスを傾ける。

「あの頃の私は本気でジンのことが大好きだった。ううん、ジンだけじゃない、あの子達のこと皆大好きだったわ。でもただ金で弄んでいただけだろと言われたら何も言えないけれど」

かつて歩美ママがジンにのめり込み、通いつめたのは、当時Jrのレッスン場という意味でJrタワーと呼ばれていた、郊外のK社長個人の巨大な別荘だった。

そこで行われていたJr達の舞台稽古。

限られた者達だけが観に行くことが出来たその非公開稽古は、別称「展示会」と言われていた少年達のオークションでもあった。

スカウト、またはオーディションに受かり、アイドルとしてのレッスンを受けながら舞台や雑誌の仕事をこなして、デビューを目指して努力するJrと呼ばれている少年達に、もう1つの重要な仕事があったという事実に私は驚きを隠せなかった。

「どうやって彼等のデビューが決まると思う?表の世界の人気だけじゃない。どれだけ裏でも人気があってパトロンがついてるか。大物の顧客達が金を落としてくれるか。そういったものも加味されるの。だから私もジンのデビューの為にジンを買い続けたのよ」

当時人気絶頂の、清純派で売っていた大女優が、J事務所のJrと呼ばれる少年を買っていたのことも同じくらい驚きだった。

「なのにジンは表舞台に出る前に突然退所して消息不明になって。酷いでしょ」

ママがその時のことを思い出したのか、苦い笑みを浮かべる。

「なのに10年以上も経って、突然お店に現れてまさかの再会。びっくりしたわ」

「わざわざママに逢いに来たんですね」

「酷い男って罵りたかったのに、ただの客だった私のことを忘れてなかったんだって思ったら嬉しくて、やっぱり好きだって思っちゃうじゃない?」

そう愛おしそうに微笑むママの顔はとても綺麗で、恋する少女のようだった。

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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時

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