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高校を卒業し、施設を出たら、きちんと大学へ行って夢を叶えるようにと書かれていた手紙通り、私は必死で勉強をして大学を受験し、高校卒業と同時に施設を出た。
そうしなければ、2度と蒼月に会えない気がして。
蒼月が会ってくれないような気がして。
大学時代の記憶は勉強とバイトの記憶しかない。
友人は1人も作らなかった。誰とも深く交じり合う気にはなれなかった。
生きてきた環境の違いは、普通の人達と自分との間にいつの間にか見えない壁を築き上げていた。
小さい頃からずっと蒼月に守られて生きてきた。
両親が死んで親戚中たらい回しにされ、暴力を振るわれていた時も、施設で劣悪な上級生達に苛められていた時も。
蒼月はいつだって強くて、かっこよくて、優しくて、大好きな自慢の弟だった。
こうして私の将来の為に、私の学費を、生活費を送り続けてくれる蒼月。
だから今度は私が弟の夢を叶えてあげる番。
だけどどうすれば蒼月の居場所が分かるのか。
何一つ手がかりがないこの状況で、焦りと苛立ちの日々の中、何年もの時が過ぎ、やっと、やっとここまで辿り着いた。
東京とは名ばかりの、都心から電車で1時間程の自然豊かなこの場所に蒼月がいるかもしれないという情報を手に入れたのが今から半年前。
そこからこの敷地へ入る資格を得る為の準備に更に半年かかった。
駅から30分は歩いただろうか。
後はこの丘を登っていけば、目的地に辿り着く。
丘の上にうっすらと見える巨大な要塞のような壁と黒い鉄扉。
選ばれた者に対してしか決して開かない重く強固な扉を前に、私は大きく息を吐いた。
所有者はとある大手芸能事務所社長。
表向きは彼の別荘として登記されているこの場所は、山一帯が別荘の敷地であり、厚く高い壁が取り囲んでいる為、外からは決して中を窺い知ることが出来ない。
重々しい扉の中央に認証カードを翳し、指紋と顔認証を受けると、ゆっくりと扉が開いた。
「お待ちしておりました」
出迎えてくれたのはまだ14,5歳だろうか。
赤い着物と身に纏い赤いランタンを持った、女の子のように大きな目の、綺麗な顔立ちをした線の細い少年だった。
「湯浴みの場まで案内致します」
川のせせらぎの音に混じって優美な篠笛の音が何処からか聴こえてくる。
辺りを舞う蛍に導かれるように少年のランタンに照らされた石畳を注意深く歩いて行けば、やがてお湯が沸き出ている小さな洞窟に辿り着いた。
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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時