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prologue ページ1

ねぇ、やっとここまで辿り着いたよ。

私は胸に手を当て夜空を仰いだ。

自分がこれからしようとしていることをまるで非難するかのように、冷たい光を放ち、澄んだ夜空にぽっかりと浮かぶブルームーン。

1年の間に13回の満月がある時だけ、その1つをブルームーンと呼ぶ為、こんな風にこの月を見上げるのは10年前のあの夜以来だ。

私と弟を引き離した元凶のような気がして、長い間ずっと見ることを避けてきたから。

だけど、やっと、
やっと辿り着いた。

8年前のあの夜、双子の弟の蒼月と見上げたのと同じ、凍てついた光を纏い、夜空に孤高に浮かぶ月を私は睨むように見つめる。

あの時の自分は理由もなく怖くなって蒼月にしがみ付いたけれど。

『何だよ、こえーの?』

『狼男が出てきそう』

『幾つだよ、お前』

馬鹿にしたように笑いながらも私の身体をそっと引き寄せ手を握ってくれた優しい蒼月の、冷たい手の感触を私はずっと忘れることが出来なずにいる。

『この月さ、ブルームーンって言うんだよ。俺の名前みたいで綺麗だろ?』

それが儚い月光の下で蒼月と交わした最後の会話。

その後、私が部屋に戻って眠りについた後、蒼月は施設から脱走し消息不明となった。

たった15歳の少年が、一体どうやってこの冷たい世界でたった独りで生きているのか。

どうして私を一緒に連れていってくれなかったのか。

何故黙って消えてしまったのか。

多くの謎を残したまま。

私は生まれる前からずっと一緒だった半身をある日突然失い、食事も喉を通らず中学校にも行けなくなった。

そのまま死んでしまいたかった。
蒼月のいない深い闇の世界に未練などなかったから。

なのに。

1週間後、差出人不明の手紙と一緒に送られてきた一冊の通帳が私をこの世界に縛り付けた。

それから毎月規則正しく振り込まれてくる大金。

蒼月から以外考えられなかった。

毎月お金が振り込まれてくる度、蒼月が無事であることが分かって安堵する。
けれど会うことが叶わない現実に不安は消えなかった。

蒼月が何処にいるのか、何をしているのか、どうやって稼いでいるのか全く分からないまま過ぎて行く時。

一体何をして生きているの?

明らかにひと月で稼ぐには多すぎる額。
普通の仕事に就いているとはとても思えない額。

だから会えない?

早く大人になって自立しなきゃ。
蒼月にもう大丈夫って早く言わなきゃ。

じゃないと何かが手遅れになる、
そんな気がして私は焦るように大人になった。

*→



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ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お待たせしていてごめんなさい;;やっと書き始めることが出来たので....相変わらずちまちま更新になるかとは思いますが、どうかお付き合い下さいませ!! (2018年8月10日 20時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
clubwonder(プロフ) - お忙しいのか中々更新されないですね…。気長に待ってるので、このまま終わるという事にはならない事祈ります!続きが気になって仕方ないです! (2018年7月28日 1時) (レス) id: 697db724dd (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - みゆさん» 最近なかなか更新出来ずにごめんなさい;;また近々再開しますのであともう少しだけ待っていて下さいね!温かいお言葉本当に有難うございます。とっても嬉しいです^^ (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - sioriさん» siori様、しばらく更新せずにごめんなさい;;次の章では彼等sideも出てくるので全容が明らかになるかと。ってそんな大したこともないんですけどね(笑) (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - clubwonderさん» お返事遅くなってごめんなさい;;毎日覗きに来てくださっていたなんて嬉しくて泣きそうです。今少しお休みしていますが、今月末からまた書き進めようと思っていますのでもうしばらく待っていて下さいね。本当に読んで下さって有難うございます! (2018年7月9日 0時) (レス) id: ba5f8d5732 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2018年5月8日 18時

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