傷だらけの僕等がいた 2 (ページ41)

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帰国へ Ki ページ41

１週間ぶりに顔を見せた横尾さん。

「来る度来る度、脅威の回復力だね。さすがAちゃん効果」

「何言ってんだよ」

「ごめんね、日本からAちゃんを呼びつけて、何から何まで頼っちゃって」

「いいんです、ボランティア活動で得ることはたくさんありました」

この地に来て、Aの顔つきは精悍に、凛々しくなったように思う。

「このまま俺とこっちに残ってカメラマンにならない？Aちゃん向いてると思うよ」

「そ、そうですか？」

そして、いつの間に２人はこんなに仲良くなったんだろうか。

中庭で横尾さんがAにカメラを教えている姿を度々見ていた俺は複雑な気持ちだった。

「口説いてんじゃねーよ、こら」

こんな危険な仕事Aにさせられるか。

「一緒にいれるじゃない、そしたら２人」

「だから俺とAはそんなんじゃ」

ない、と言いかけて止めた。

どうせ何を言ってもニヤニヤされるだけだろう。

Aも気にもしてないのか否定しないし。

当然のことだが、周りの誰からも俺はAと恋人同士だと思われていた。

わざわざ俺の為に日本から飛んできたA。

横尾さんや滝沢社長の知り合いなどの手を借りてとは言え、女性が単身この地で生きていくのは並大抵のことじゃなかったはずで。

しかもNGOの人々と一緒に仕事まで。

凄い女だよな、お前。

俺は眩しいものでも見るようにAをいつまでも見つめていた

∇

結局、横尾さんが２人分の飛行機を手配し、俺は日本の病院に転院することになった。

早朝の飛行機だった為、出発前夜、空港近くのホテルの部屋に俺とAは泊まることになった。

長時間の移動の為、車椅子での移動を助けてくれるA。

Aの幸せの為に離れたのにも関わらず、結局再び自分の存在がAを縛り付けている。
それが俺の心に一層、早く元の身体に戻らなければという焦りを生んだ。

「ごめんな、A」

幾度となく呟いてしまう謝罪の言葉。

藤ヶ谷との生活を壊して。
離れ離れにさせて。

日本に帰ったら独りでもやっていくから。

「もう今後は絶対に謝らないで」

けれど、初めてAが俺に対して声を荒げた。

「私が宏に何かをしたいって思う気持ちは、同情でも、義務感でもない。私がしたいだけなの。だから謝らないで。謝罪も、お礼も、見返りも求めてないし、そんなの要らない。だから宏にはただ受け取って欲しい」

Aの言葉に、俺はかつて横尾さんに言われた言葉を思い出していた。