3 Ki ページ39
藤ヶ谷に抱き上げられ運ばれていったAが心配で、体育祭の全体練習が終わった瞬間、俺は保健室へ駆け出していた。
最近元気ねーなと思ってたけど、体調悪かったのかよ。
元々、他人に弱味を見せる奴じゃないのは理解ってるけど、俺に何も話してくれないAが歯痒かった。
寝ていたらと思い、保健室のドアをそっと開ければ、引かれたカーテンの中からぼそぼそと話す声が聞こえる。
A、起きてんのか。
てか、この声、藤ヶ谷...?
「太、ちゃん...行かないで...」
太ちゃん?
太ちゃんて...藤ヶ谷、のこと?
鼓動が早くなる。
「太ちゃん、本当に結婚する...の?」
「ああ」
「何で...何で、私せっかく...せっかくここまで大きくなったのに。やっとここまで来たのにっ」
「A、俺はっ」
「A、大丈夫か?」
2人の間にただならぬものを感じた俺は、カーテンの手前から大声を出した。
勢いよくカーテンが開き、強張った顔で出てきた藤ヶ谷に、俺はわざと驚いてやった。
「うわっ、藤ヶ谷、いたのかよっ」
「っ、ああ、玉森の様子、見に来てた...」
俺から目を逸らして答える藤ヶ谷。
「俺も入っていい?」
返事を待たずにAの傍へ駆け寄れば、藤ヶ谷がそっと保健室を出ていくのが分かった。
「A、大丈夫か?お前、ちゃんと飯食えてる?」
Aの頭を撫でてやれば、Aが泣きそうに顔を歪めた。
「北山先輩、私っ──」
Aの紡ぐ言葉が怖くて、俺はAの唇を自分の唇で塞いだ。
驚いて目を見開くA。
「誰もいない保健室って何かムラッと来ちゃうな」
「せ、先輩っ」
「もういい加減、名前呼んでよ」
「え?」
「北山先輩、じゃなくてさ。下の名前」
太ちゃん、と呼んでいたAの声が頭から離れない。
「宏光、って呼んで」
「で、でも」
「呼んで」
「宏光...先輩?」
「ぶっ、ま、いっか。いいよ、まだそれでも」
俺はくすっと笑って、
「Aってさ、藤ヶ谷のこと、他の女子みたいにたいぴーって呼ばないのな」
思いきって気になることを訊いてみた。
「何で?」
戸惑った表情を浮かべるAから目を逸らさずにいると、Aが唇を噛み締めた。
俺は意地悪だ。
だけど以前から気になっていたのは事実だった。
「何か...他の子達みたいに、そこまで先生と話したりしてないから...」
「ふーん」
俺は納得したように頷いて、Aの額にもう一度キスをすると、
「また来るな」
教室へと戻った。
314人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» た、大したことない(爆)太ちゃんが独りで息巻いてるだけです(爆)(爆) てかそんな思い付かないですよねアクロバティックなこと← (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ぐりさん» うわぁーもう半月経ってますね涙。ご、ごめんなさい;; しかもこの先、しばらくずっと話も動きませんが、どうかお付き合い下さいませヽ(;▽;)ノ (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - mamiさん» だいぶお待たせしてしまい本当にごめんなさいっ(土下座)体調崩して長期療養していて涙 ぼちぼち復活出来そうなので頑張りますね><。。 (2017年12月14日 9時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - すごいです、ましろさん…!!脇の下攻めるとかさすがすぎて(//∇//)私が知らない愛し方で啼かせて太ちゃんっ!←違う 自坦のハッピーエンドが少ないましろさんの作品。このお話はどうなるのか…ドキドキ(@_@;)続き楽しみにしてますっ(*≧∀≦*) (2017年11月30日 12時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぐり(プロフ) - もーう息苦しい!!ので、続きを!!どうかよろしくお願いしますー!!笑 (2017年11月28日 23時) (レス) id: ccfaf12877 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ましろ | 作成日時:2017年10月14日 16時