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再会 F ページ10

「太輔!」

突然背後から呼ばれて、心臓が飛び上がる程驚いた。

この声、忘れもしない...

慌てて振り返れば、

「Aさん!」

クラブRoseのナンバーワンであるAが、俺に抱きついた。

「元気だった?」

再びAに出逢えて、俺は嬉しくて泣きそうだった。

あの夜以来、俺は当てもなく街をふらつきながらもAの姿をいつも探していた。

一時も忘れたことなんてなかった。

誰もが目を引く華やかさと美しさと退廃的な雰囲気を纏ったAが俺の腕の中にいる。

やっと見つけて貰えた...

「Aさん、この間はありがとう」

2ヶ月前に泊めて貰った礼を言えば、Aが悪戯っぽく笑い、俺の耳元で囁いた。

「太輔の身体、最高だった」

瞬間、Aの艶かしい身体が脳内に甦って、身体の中心が熱くなる。

「太輔を専属で飼いたいなと思ったけど、太輔はそういうの嫌いだもんね。だからたまにでいいからあたしと遊んでね」

屈託のない笑顔でそう言われて、思わず「Aさんになら飼われてもいいよ」と言いたくなった。

そんなこと本当は思ってもいないくせに。

「Aさん彼氏いるくせに」

「不倫の彼氏は彼氏とは言わないの」

夜の世界に生きる女は皆そうなのか、Aもまた幸せとは程遠い場所で生きている。

Aのその孤独な雰囲気が、俺を安心させるのかもしれなかった。

「あのね太輔、この間いきつけのバーのマスターに太輔の話をしたら会いたいから連れてこいって言われたの。だから太輔を見つけられて本当に良かった。今日同伴してくれる?そのバーで夕飯も御馳走するから」

Aのお願いに、

「俺が払うよ」

と言えば、Aはかぶりを振って、

「いくらお金があっても高校生にお金は払わせられません。お酒も飲ませないから連れていくのだけは目瞑ってね。同伴出勤じゃないと遅刻の罰金がついちゃうから」

自腹を切ってでも単なる遅刻扱いされたくないのは、店のナンバーワンのプライドなのかもしれない。

そう言えば、Aは毎日ほぼ同伴出勤だと言っていたのを思い出す。

Aに大枚はたいても惜しくない男達が、世の中にたくさんいるってことなんだよな。

それは本当に凄いことだと思った。

それに比べて。

俺のやってることは、捨て犬がその日のエサにありつくために、一生懸命尻尾を振ってみせているのと変わらない惨めな媚び。

思わず自嘲めいた笑みが零れた。

オカマバー F→←After two months F



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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

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