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誘惑 ページ6

食事だけではなく、お風呂も既に沸かして待っていてくれた太輔の気遣いにあたしが驚いてると、

「俺、こんなことぐらいしか出来ないけど、ここにいていい?」

太輔が不安げにあたしを見る。

「何もしなくたっていていいよ?」

そう言ってあげると、嬉しそうに笑った。

「Aさんて化粧落としてもあまり顔変わらないんだね。そういう人好き。俺メイクで顔変える人ってあんま好きじゃないから」

そう言いながら お風呂から上がったあたしの髪の毛を太輔はドライヤーで乾かしてくれる。

「どうしてここまでしてくれるの?」

「拾ってくれたお礼だよ」

太輔もまた何かを抱えて生きているのだろう。

夕暮れの歓楽街を独りでふらついて、野良猫に心奪われるような高校生が健全なはずがない。

しかもこんな風に女に拾われることに、彼はとても慣れているような気がした。

胸がチリッと痛む。

そういう自分も太輔のことを言う資格はない。

不倫とは言え、付き合ってる男がいるのにも関わらず、他の男を簡単に家に連れ込んでる自分だって同じようなものだ。

思わず苦い笑みが零れた。

食事をし終えて、洗い物をしにキッチンに立ったあたしを追って太輔もキッチンにやってきた。

「俺も手伝うよ」

「いいよ、片付けはあたしがするから。太輔は座ってて」

「やだ」

拗ねた声で言われ、後ろから抱きしめられる。

「Aさん、いい匂い」

首筋に太輔の吐息がかかり、あたしは思わず身を捩った。

見た目より骨っぽくて、筋肉質な腕が力強くて、今更ながら太輔は男なんだと意識する。

「逃げないの?」

「どうして?逃がしてくれるの?」

「だってAさん彼氏いるでしょ」

この家の何処かでみっくんの痕跡でも見つけたのだろう。

太輔の苦しそうな声に、不謹慎にも嬉しいと思ってる自分がいる。

お手軽な出逢いからの関係でも、きちんと気にしてくれる彼の優しさと潔さを、とても素敵だと思った。

「大丈夫」

あたしがそう答えた瞬間、後ろから太輔の指があたしの顎を持ち上げた。

そのまま覆い被さるように太輔があたしにキスをする。

太輔のキスはとても気持ちが良かった。

啄まれ、やがて深くなっていくキスに、頭の中が熱に浮かされたようになっていく。

もう立っていられない。

そう思った時だった。

ふっと身体が軽くなり、自分が太輔に抱き上げられことに気付く。

「ベッドに行こう」

断れるわけがない、とてつもなく甘美な誘惑だった。

触れる F→←幸せな出迎え



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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

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